ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

1-1 スーパーグループCSN&Y!

・ブログタイトル「ケンジロニウスの再生」について

「ケンジロニウス」についてはもし僕が古代ギリシャ哲学者だったら、の固有名詞とゆーことで皆さん満場一致で納得だと思います。「再生」については「切れたトカゲの尻尾が再生した」の「再生」であり、文字通り再び生き還ること、元々あったものが再び復元、復活するという意である。つまり僕が本来の姿に復活するためのブログということである。

言葉ってのは面白いものでオーディオ機器で音楽や動画を流すことも「再生する」と言う。それは音楽をオーディオ機器で流すことを、音楽を再び生き還らせることだと言葉上とらえていることになる。

つい先日、3月4日にプロディジーのフロントマンであったキースフリントが死んだ。もちろん前回言ってたクロスビートだかロッキンオンだかの年代別名盤500選の中の90年代100選にプロディジーも挙げられていた(カニのやつね!「the fat of the land」)。死んでしまったことは悲しいけれど彼の声はCDを再生すればいつでも聞ける。

音楽を再生することはその中にいる人を「再生」させることなんだな。そう思うとコンポのリモコンの再生ボタンが、Apple musicの再生ボタンが、魔法のボタンのように見えてきた!

この録音と再生とゆーテクノロジーに猛烈に感動しながらアルバイトに向かう僕はバイクにまたがりiPhoneで「ジョンの魂」を再生し、ジョンレノンを生き還らせた。

・CSN&Yというスーパーグループ

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(CSN&Y)

さて、いよいよ関連図を元にロックの歴史を辿ろうの第1弾が始まる。前回の前置きでも言ったとおりロックはビートルズで始まった、という認識を僕は持っている。ロックはロックンロールの略称ではなくアメリカで生まれたロックンロール、ブルース、カントリーミュージックなどをイギリス人がより表現の幅を広げ芸術的に押し進めたものであるという考え方だ。

つまりロックはイギリスで生まれたものである。

ビートルズを中心としてストーンズキンクス、アニマルズなど様々なロックバンドがイギリスで育ち、ブリティッシュインヴェイジョン(イギリスの侵略)でアメリカ全土に広まり、アメリカの音楽チャートのトップ10のほぼ全てがイギリス音楽で埋め尽くされたってわけだ。そこからアメリカンロックが始まった。

そう、ロックはイギリスのものである。

とここまで言っておきながら、記念すべき第1回目がCrosby,Stills.Nash&Young(CSN&Y)。アメリカ、ロサンゼルスで結成されたグループである。しかもかなりフォーク色の強い。どないやねんとお思いかもしれないが、関連図を作ろうと思いたった時に真っ先にCSN&Yを思い浮かべてしまったのだから仕方ない。

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僕がアメリカンロックと聞いた時に1番に思い浮かぶのはウエストコーストロックだ。

エストコースト、つまりアメリカ西海岸、主にカリフォルニアを中心に発展していった音楽である。

60年代後半、西海岸はカウンターカルチャー、ヒッピー思想、ドラッグカルチャー真っ盛りで、その中心にいたのがThe DoorsGrateful Dead、Jefferson Airplane、そして後にCSN&Yを結成する2人の男が在籍していたBuffalo Springfieldである。

60年代後半の西海岸のヒッピーカルチャーそしてサイケブームと70年代半ばのイーグルスやジャクソンブラウン、ドゥービーが作り出すまさにアメリカ的泥臭さと爽やかさを持ったロック、その狭間に現れウエストコーストの未来を作ったのがCSN&Yなのだ!!

CSN&Yというフォークロックグループは俗に言うスーパーグループで、もうすでに認知度の高い4人の歌い手、The byrdsのデイヴィッドクロスビー、Buffalo Springfieldのスティーブンスティルス、The Holliesのグラハムナッシュ、スティルスと同じくBuffalo Springfieldのニールヤングからなる夢のグループである。アメリカのバンドだとは言ったがグラハムナッシュはイギリス人、ニールヤングはカナダ人でクロスビーとスティルスアメリカ人といった感じだ。

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(CSN&Yの出身バンド)

元はクロスビースティルス&ナッシュ(CS&N)と名乗り、3人で始動したグループである。ニールヤングとの対立の末バッファロースプリングフィールドを解散させた直後のスティルス、音楽性の違いからバーズを脱退した直後のクロスビー、ホリーズ脱退間近のナッシュの3人がジョニミッチェルの家で顔を合わせたところから始まった。1968年の7月のことである。

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69年5月にデビューアルバム「Crosby,Stills&Nash」を発表。3人の美しいコーラスとアコースティックな音作りですぐに話題になるがロック要素が足りないというスティルスの提案によりもう1人ギタリストを入れることに。いくつかの誘いを断られ(ジミ・ヘンドリックスにも声をかけたと言われている)、最終的にバッファロースプリングフィールドでスティルスと喧嘩別れしたはずのニールヤングが加入しCSN&Yとなった。

伝説の音楽フェス、ウッドストックフェスティバルにも出演し(これはCS&Nとして)、翌年70年には「Déjà Vu(デジャ・ヴ)」を発表。これが大ヒットしCSN&Yは一気に頂点に登りつめた。

71年にはライブアルバム「4 Way Street」を発表しこれもビルボードチャート1位を記録。

が、結局スティルスとヤングの対立は深まるばかりでグループは終わりを迎える。(ちょくちょく3人だったり4人だったりで復活し、88年と99年には4人揃ってオリジナルアルバム発表。)

4 Way Streetは70年に行ったライブ音源なので、実質ニールヤングを加えたCSN&Yはたった1年ほどの活動である。

CSN&Yの簡単なバイオグラフィーはこんなとこだろうか。そんな短い期間の活動の中、リードギタリストとしてニールヤングが参加し天下をとり、今でもウエストコーストロックの最高峰と名高い名盤「デジャヴ」を紹介しよう。

SIDE1

1.Carry On(Stills)
2.Teach Your Children(Nash)
3.Almost Cut My Hair(Crosby)
4.Helpless(Young)
5.Woodstock(Stills)

SIDE2

1.Déjà Vu(Crosby)
2.Our House(Nash)
3.4 + 20(Stills)
4.Country Girl: Whiskey Boot Hill / Down, Down, Down / Country Girl (I Think You're Pretty)(Young)
5.Everybody I Love You(Stills)

()は作詞作曲リードボーカル

*SIDE1-5は作詞作曲ジョニミッチェル、SIDE2-5はヤングとスティルスの共作

SIDE1に4人がそれぞれ1曲ずつ、そしてジョニミッチェルのウッドストック、SIDE2に再び4人がそれぞれ1曲ずつ、そしてスティルスとヤングの共作が1曲

という非常に4人のバランスがとれた10曲になっている。

 

SIDE1

1.いきなしアコギの秀逸なカッティングから始まるスティルスのCarry On。とてつもなく歯切れはいいが不気味なアコギにサイケ感漂うリードギター、そして美しいハーモニー。実はニールヤングは加入したものの参加していない曲がこのアルバムにも何曲か存在し、この曲もそうだ。

2.グラハムナッシュのTeach your childrenは爽やかでキャッチーなフォークロック。日本でヒットした映画「小さな恋のメロディ」のエンディングにも使われた曲(トロッコのシーンね)。前編を通して絶妙に鳴るペダルスチールギターグレイトフルデッドのヒゲ魔人ジェリーガルシアによるもの。

ジェリーガルシア、つなげちゃいましょうか。

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3.クロスビーによるカットマイヘア。ハードなロックナンバーでここでやっとニールヤングのリードギターが炸裂。ニールヤングはギタリストというよりもSSWとして有名なんだが、決して上手いとは言えない荒削りで狂気的でヘロヘロなギターは独特ですぐにニールヤングのギターだとわかる。

唯一1発録りで録られた曲で、コーラスも一切なく、クロスビーの熱唱のみ。

長髪がこの時代のカウンターカルチャー、ヒッピーカルチャーのアイコンだったのだが、それを切ってしまおうという曲。オルタモントの悲劇により底が見えたヒッピー文化を歌ってるのだろうか。

4.3つのコードのみで展開していくニールヤングによる名曲Helpless。初めて聞いた時は、あれ?ディランのヘブンズドアにクリソツやん。って思った曲。いやしかし名曲!

後のソロキャリアの中でもたびたび演奏されるニールヤングの代表曲とも言える曲。

ヤングをメンバーに誘うためにCS&Nが彼の家に説得にいった際ヤングがこの曲を弾き語ったらしく、それを聞いた3人は「僕たちを君のバンドに入れてくれないか?」と逆に申し出た、という逸話まである。

5.ジョニミッチェル作曲のウッドストック。ナッシュの恋人だったジョニミッチェルがナッシュからウッドストックフェスティバルについて聞かされて書いた曲。彼女自身はウッドストックフェスには出演していない。

僕もDVDで何度も見たウッドストックフェスティバルのドキュメント映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』のエンディングでも流れる。

ジョニ自身も同年発表の3rdアルバムにこの曲を収録。

ジョニミッチェルはCSN&Yとかなり密接なので繋いどきます。ちなみにクロスビーとも関係があったと言われている。

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SIDE2

1.タイトル曲「デジャヴ」はクロスビー作。これもニールヤング不在。

三連のリズムに乗せられた謎のスキャットから始まりエキゾチックな雰囲気に3人の呪文のような歌が乗る。クロスビーはバーズ時代からこうゆうサイケデリックでエキゾチック(異国感、僕からみればアメリカもイギリスも異国なんだけど…)な側面を見せてくるから好き。

最後は''we have all been here before"(僕たちは前にここにきたことがある)のリフレインで終わっていくのだがその後ろで鳴っているスティルスのベースソロも必聴。

2.グラハムナッシュのOur House、僕達の家。恋人であるジョニミッチェルとの生活を歌った美しい曲である。唯一のイギリス人であるナッシュだが、明らかにこのアルバムでは浮くほどブリティッシュな一曲。繊細で優しくて可愛くて…おれやっぱブリティッシュロックが好きだ!って思っちゃうね。

3.スティルスによる4+20。スティルスの弾き語りソング。

ビートルズがインド修行の時にドノヴァンに習ったとされるアルペジオ奏法があるんだけど、それを思わせるアコギの弾き語り。Dear prudenceやJuliaで使われているアルペジオだ。

「ヤングはボブディランになろうとしていて、僕はビートルズになりたかったんだ」みたいなことをスティルスが言ったという話をどこかで見たような気がするんだけど、なるほど。

4.ニールヤングによるカントリーガール

Whiskey Boot Hill、Down, Down, Down、Country Girl (I Think You're Pretty)という3つのパートが組み合わさった組曲となっている。

バッファロースプリングフィールド時代のBroken allowなど若きニールヤングは壮大でドラマティックな楽曲を作ってたんだなぁ。

5.スティルスとヤング共作のロックナンバーEverybody I Love You。ヤングのヘロヘロギターが鳴り響く!2分弱と短い曲で、アルバムのエンドロールソングといった感じ。終盤リズムが変わるとこなんかもビートルズの影響をかなり受けている印象。

 

てな感じの名盤デジャヴなんだけど、これだけの作曲者が均等に2曲ずつってもったいない。ってことでこの先それぞれソロとして活動し大活躍するわけだがこの一瞬の奇跡の交わりである「デジャヴ」を是非とも聞いてほしい。Apple Music、Spotifyyoutubeでもなんでもいいです。便利な時代だ。

次回からはそれぞれの出身バンドに遡ってみようかと(正直こっちが本命)。

ひとまず図はここまで!

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