ケンジロニウスの再生

関連図を元にロックサーフィンを繰り広げたい所存。

5-1 ブリティッシュフォークとフォークリバイバル

洋楽について

10代の頃まず僕は「洋楽」に興味を持って、それから今日までロックを聴き続けているんだけど、気付いた時にはその「洋楽」を演っているのがアメリカのバンドかイギリスのバンドかを気にかけるようになっていた。それはごくごく自然な事で、やっぱり「洋楽」とか「欧米」で括られていてもアメリカとイギリスは遠く離れた全く違う国であるのだから音楽も違うに決まっている。

ザ・バンド(us)とプロコルハルム(uk)の違い、イーグルス(us)とピンクフロイド(uk)の違い、R.E.M(us)とスミス(uk)の違い、ニルバーナ(us)とオアシス(uk)の違い、レッドホットチリペッバーズ(us)とレディオヘッド(uk)の違いは一体なんなんだろうか。もちろんそれぞれ音楽的相違点は多々あり、それを一つ一つ紐解いていくことは可能であるがそれ以前にこれを言ったら元も子もないが何より「国が違う」。国が違えば文化、バックグラウンドが違うし、音に込められた空気感が違う。単純な話だ。

だからもうそろそろ「洋楽」って言葉、廃止しようぜって本当に思っている。洋楽邦楽じゃなくて、アメリカ音楽、イギリス音楽、日本音楽でいいじゃないの。少なくともアメリカ人やイギリス人はアメリカとイギリスの音楽をひとまとめにはしていない。はず。

 

とはいえここまで書いてきたようにアメリカとイギリスの音楽交流は密接に行われてきたのは確かである。ロック誕生からのアメリカとイギリスのキャッチボールを簡単に。

 

アメリカとイギリスのロック

 

🇺🇸アメリカ🇺🇸

50年代半ばにアメリカの黒人音楽であるブルース、ソウルR&B、ゴスペルと白人音楽のウエスタンカントリーやブルーグラスが融合してロックンロールが誕生。

🇬🇧イギリス🇬🇧

アメリカから輸入されたスキッフル(ジャグバンド)やロックンロール、ブルース、カントリーなどを吸収し、60年代頭にビートルズローリングストーンズ、キンクスザ・フーホリーズなどのロックバンドが誕生(ロックとロックンロールを別のジャンルとして捉えるならばロックの誕生)。

🇺🇸アメリカ🇺🇸

64年のビートルズアメリカ上陸を皮切りにイギリスで生まれたロックバンドがアメリカのチャートを占領する《ブリティッシュインヴェイジョン(イギリスの侵攻)》によって当時ロックンロールブームも冷めきっていたアメリカに「ロック」という新たな風が吹く。これによりアメリカンロックが幕を開ける。フォークシンガーであったボブディランはこの影響を受けてエレキギターを手にした。

65年デビューのThe Byrds『フォークロック』というジャンルを確立し、さらに66年3月のシングル「霧の8マイル」によってサイケデリックロック』の扉を開く。

そして60年代中頃から加熱し始めたカウンターカルチャーが西海岸で爆発し、66年にはグレイトフルデッド、ジェファーソンエアプレインといったサイケバンドが誕生、《フラワームーブメント》が花開く。

ビーチボーイズビートルズ「ラバーソウル」の影響でサーフロック(ロックンロール)を卒業し、より音楽の深みを目指し始め、66年に名盤「ペット・サウンズ」を完成させた。

🇬🇧イギリス🇬🇧

アメリカへの侵攻の手土産としてビートルズ等ブリティッシュインヴェイジョン勢はカウンターカルチャー、そしてサイケデリックロックを持ち帰り、66年8月にビートルズリボルバー」、ドノヴァン「Sunshine Superman」をリリース。

同時にロンドンアングラシーンが誕生し、67年にはピンクフロイドサイケデリックバンドも出現。ブリティッシュサイケブームが巻き起こる。

69年にはサイケデリックブームが終わり、サイケによる表現力の拡大をさらに押し進める形で「アートロック」プログレッシブロックが誕生。クリームやジミヘンなどのブルース色の強いサイケバンドの先にはツェッペリン、ブラックサバス、ディープパープル、フリーなどの「ハードロック」が誕生。

🇺🇸アメリカ🇺🇸

アメリカも69年にはフラワームーブメントが終焉。古き良きアメリカを取り戻すべくルーツミュージックに回帰していく流れの中で南部音楽に根ざしたスワンプロック、CSN&Yなどのフォークロック、カントリーロックやブルースロック。

ブルースロックから発展してアメリカンハードロックを切り開いていくエアロスミスも70年にデビュー。

70年前半にはイギリスのプログレッシブロックの影響からカンサスなどのアメリカンプログレハード」が誕生。

 

ってな感じがロック誕生から70年代前半までの簡単なアメリカとイギリスの音楽キャッチボールである。アメリカとイギリスは互いに影響し合ってロックを発展させてきたわけだ。

 

さ、見ての通り60年代後半から70年代前半のイギリスではサイケ、アートロック、プログレが盛り上がったのだが、同時期にそれとは別に盛り上がりを見せたのがイギリスのフォーク界隈、『ブリティッシュフォークロック』である。特に女性ボーカルのバンドが多数活躍したこの界隈を5章では見ていこうと思うが、その前にフォークリバイバルについて語る必要があるだろう。

 

 

5-1 ブリティッシュフォークとフォークリバイバル

🇺🇸アメリカ🇺🇸

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(ウディガスリー)

【フォーク】とは【民謡】を意味し、民謡研究家によってアメリカ各地で昔から歌い継がれた民謡を発掘する動きが1930年代のアメリカで起こったのがフォークリバイバルの始まりと言われている。それらは労働歌や皮肉に溢れた社会風刺がほとんどであった。40年代にはウディガスリーやピートシーガーがアコースティックギター 1本で弾き語るスタイルでそれらを世に広めると同時に、民謡を習ってオリジナルのフォークソングを作り出した。それは第二次世界大戦に対する反戦歌であったり、やはり労働者目線の歌がほとんどであり、この動きが注目を集め商業化に乗り出し、50年〜60年代にかけて世界中でフォークリバイバルブームが起こることとなる。

50年〜60年代になるとアメリカは公民権運動やベトナム反戦運動真っ只中で、それらについて歌ったフォークシンガー達は『プロテストフォーク』と呼ばれることとなり、その到達点であり最終形態とも言えるのがボブディランであった。

そのディランが60年代半ばにイギリスのロックの影響を受けてエレキギターを持ち、同じくフォーク界隈にいた数人がビートルズの影響を受けてバンド結成を思い立ちThe Byrdsを結成し、アメリカでフォークロックが誕生した。

 

そもそもアメリカの民謡って何だって話なんだけど、それは先住民のインディアンが語り継いだ歌、ってわけではなくて。

みなさんご存知の通り、アメリカは極めて歴史の浅い新しい国である。コロンブスが1492年にアメリカ大陸を発見し、ヨーロッパ諸国の人々がアメリカに移住し、植民地とした。アメリカ民謡の原点はヨーロッパ諸国、主にイギリスの民謡(アイルランド民謡、スコットランド民謡)にあり、そこから1776年にアメリカ合衆国独立宣言、そして1930年代にフォークリバイバルが起こるまでに長い年月をかけてイギリス民謡は徐々に形を変えてアメリカ民謡として歌い継がれていったわけだ。

 

🇬🇧イギリス🇬🇧

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(シャーリーコリンズ)

つまりアメリカ民謡の原点はイギリス民謡にあるわけなんだけど、イギリスでもアメリカで起きたフォークリバイバルに影響を受けて1950年代にフォークリバイバルが起きる。

イギリス民謡は伝承歌、伝統音楽、トラディショナルフォーク(トラッドフォーク)、もしくは単にトラッドと呼ばれることが多い。フォークリバイバルが起きた50年代のリバイバルトラッドフォーク歌手にはシャーリーコリンズなどがいるが、当時は無伴奏で歌うのが主流であった。確かに昔々はギターなんてなかったわけだから、その伝統を守るのならば無伴奏が正しいと言えるのか。

一方でスキッフルが流行しギターの弾き語りが一般化していく60年代頭にフォークギタリストとしてディヴィ・グレアムが姿を現わす。これは当時「異端」なことでありリバイバリストの中には反発する人もいたらしい。

そんな伝統を重んじるトラッド歌手のシャーリーコリンズと時代の流れに出てきた異端児ディヴィグレアムがコラボレートしたアルバム「Folk Roots New Routes」がリリースされる。

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これによってイギリスのフォークリバイバルは、単に伝統的なトラッドフォークを復活させただけで終わらず、革新への道へ進んでいくことになる。とはいえこの時点でまだブリティッシュフォークはアコースティックギターとやっと出会っただけである。

世間は64年であるので、イギリスではビートルズを始めとしたロックバンドが誕生し、アメリカへ侵攻する年であり、65年にアメリカにてディランやバーズによってフォークロックが誕生したことでイギリスのロックバンドもフォークニュアンスを取り入れ始めるがそれはあくまで「アメリカンフォークロック」のニュアンスであり、それは65年にデビューするスコットランド人のフォークシンガー、ドノヴァンも同じである。

この時点でブリティッシュトラッドフォークとロックの邂逅はまだ起きておらず、本当の意味での「ブリティッシュフォークロック」の誕生はもう少し先である。

その誕生はいつなのかというと、68年にフェアポートコンベンションとペンタングルという2つのブリティッシュフォークバンドがデビューした、その地点が「ブリティッシュフォークロック」の誕生と言えるのではないかと思っている。

 

サイケデリックブーム、そしてプログレッシブロックへと移っていく70年前後のイギリスロック界の裏で密かに誕生し、盛り上がっていくブリティッシュフォークロックを5章では見ていこうと思う。2章でブリティッシュフォークの重要人物、ジョーボイドというプロデューサーについて書いた際に少し触れたブリティッシュフォーク界隈だけれど、5章ではもう少し詳しく。

ブリティッシュフォークロックはとにかく美しい歌声の女性ボーカルを抱えたバンドが多数存在し、さらに70年ころには「プログレフォーク」と呼ばれるバンドも出現。トラッドとロックの融合を見事に果たしたバンド達をいくつか紹介していきたい!そして今回はその下地ということでフォークリバイバルを簡単に振り返ってみました!

終わり!続く!