ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

5-7 底なしの英フォークロック

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さぁ5章でここまで繋がってきた英フォークロックが上の図で、あらかた主要なものは書けたなぁなんて思うんだけど関連関連で行くと書きたいのにどうしても繋がらない奴らがやっぱり出てきて…それを軽く紹介してひとまず英フォークロックとオサラバしようかと。

すでに名前が出たとこをさらっておくと、シャーリーコリンズ、ディヴィグレアムから始まってペンタングル(バートヤンシュ、ジョンレンボーン)、フェアポートコンヴェンション(サンディデニー)、フォザリンゲイ、スティーライスパン、ストローブス、チューダーロッジ、メロウキャンドル、スパイロジャイラ、Flibbertigibbet(なんて読むんだか…)、アンブリッグス、ニックドレイク、ヴァシュティバニヤン

アシッドフォーク系だとインクレディブルストリングバンド、ドクターストレンジリーストレンジ

くらいだろうか。いやしかしこうして連ねてみるだけで幸せになれる面々だな。

ブリティッシュフォークは《底なし沼》だなんて言われてて、潜っても潜っても底が見えないくらい無数のバンドが存在しているみたいで(まぁどのジャンルでも言えることだが)。僕なんかはブリティッシュフォークに出会ったのはこの5,6年くらいでまだまだ浅瀬をうろちょろしてる程度なんだけど、それでも恐らくは皆さんのほとんどの目に触れることなく隠れている浅瀬の英フォークロックバンドをもう少しだけ紹介していこうと思う。

5-7 底なしの英フォークロック

図で繋げれなかったとこを紹介していこうと思うんだけど、フェアポート関連で書き漏らしていたとこがあるのでそこから。

the Albion Country Band

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フェアポート・コンベンションの創設メンバーでありベーシストのアシュリー・ハッチングスが71年に結成したバンドである。

サンディデニーの加入でトラッドフォークに目覚めたフェアポートコンヴェンションであったが中でも強くトラッドに傾倒していったのがハッチングスであった。69年に4th「Liege & Lief」で英フォークロックの道を切り開いた後フェアポートを脱退し、よりトラッドな作風を求めてティーライ・スパンを結成。と、ここまでは以前書いたところである。

詳しい時期はよくわからないんだけど、この70年付近の頃ハッチングスはブリティッシュトラッドの歌姫シャーリー・コリンズと結婚しており夫婦であった。

シャーリーコリンズは英フォークリバイバルの最重要人物であり、元々は無伴奏トラッド歌手であったが64年にディヴィ・グレアムとコラボレートした「Folk Roots, New Routes」でギターとの邂逅、ジョーボイドがプロデュースした68年「The Power of the True Love Knot」では英フォーク界の革新派と言えるインクレディブルストリングバンドの2人をバックに従えるなど、純粋なトラッド歌手としてデビューしてから時代の流れと共に徐々にロックに歩み寄っていく彼女のキャリアはトラッドとロックの関わりの縮図と言える。

そして71年に夫であるアシュリーハッチングスを中心にハッチングスが以前在籍していたフェアポートコンヴェンションのメンバー、そして当時活動していたスティーライスパンのメンバーらをバックに従えてShirley Collins and the Albion Country Bandとしてアルバム「No Roses」をリリースする。

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つまりはアルビオンカントリーバンドはシャーリーコリンズのバックバンドとして結成されたバンドである。フェアポート、スティーライスパンといった当時の英フォークロックの先頭を走っていたメンバーが集結したスーパーグループをバックに最重要トラッド歌手シャーリーコリンズが歌っているこのアルバムは英フォークを語る上で避けては通れない名盤。

No Roses

No Roses

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ハッチングスは72年にスティーライスパンを脱退。the Albion Country Bandで73年に「Battle of the Fieldをレコーディングする(リリースは76年)。

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このアルバムでは共にスティーライスパンを抜けた英フォークの重鎮マーティン・カーシーも参加している。全曲トラディショナルであり、まさにトラッドとロックの融合を追求した作品である。

BATTLE OF THE FIELDS

BATTLE OF THE FIELDS

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アルビオンカントリーバンドとしてリリースしたのはこの2枚であり、ハッチングスはこの後The Albion Dance Band、The Albion Band、The Albion Christmas Bandとアルビオンを冠したプロジェクトを2014年まで続けて行くがこの辺は全く未聴。ハッチングスは他にも何やら色々とやってるようで、彼1人で底なし沼の一角を作ってんじゃないのか。

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Trader Horne

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これもフェアポート関連。1stのみで脱退したジュディ・ダイブルが69年に結成したフォークデュオ。

《イギリスのジェファーソンエアプレイン》と呼ばれていた1stの頃のフェアポートのボーカルジュディダイブルであるが、脱退後はキングクリムゾンの前身バンドであるGiles, Giles and Frippに恋人であったイアン・マクドナルドと共に加入するが短期間で脱退し、イアンマクドナルドとも破局。その後組んだのがこのトレイダー・ホーンである。

トレイダーホーンはジュディ・ダイブルとジャッキー・マコーリーのデュオなんだけど、このジャッキー・マコーリーという男がなんとヴァン・モリソン率いるThemの創設メンバー(65年に脱退)。

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70年に唯一作「MORNING WAY」をリリース。

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ファンタジックなフォークって感じで、B級感も相まってアシッドフォークとも捉えれる雰囲気。まぁ悪くないんだけど、フェアポートとThemのネームが無かったら聞かないかな…

Trees

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Treesは英フォークロックの中でもかなりお気に入りのバンドだし割と有名な部類のバンドなんだけど、ここにどうにも繋がっていけなくて…

69年に結成し、70年に1st、71年に2ndアルバムをリリースしている。フェアポートと比べられることが多かったみたいだが、サイケデリックプログレッシブな面を強く持ちプログレフォークバンドの代表格である。僕はメロウキャンドルとサウンド的には近いと思っていて、トラッドの持つ神聖さとロックの重さが見事にマッチングした素晴らしいバンドだ。

オリジナルとトラディショナルがほぼ半分ずつで構成されたスタイルでまさしく英フォークロックなバンドである。

とにかくヒプノシスがジャケットを手がけた71年2nd「On The Shore」が有名。

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ヒプノシスはアルバムのカバーアート主体で活躍し、アルバムジャケットに芸術的要素を持ち込んだアートデザイングループである。68年にピンクフロイド「神秘」から始まって、この71年の頃までにすでにピンクフロイドの「原子心母」、シドバレットのソロ2作、ELOの1st、T-REXの「電気の武者」などの名だたるジャケットを手がけている。そんなヒプノシスを起用できたあたり、Treesもかなりの知名度を得ていたことが伺えるんだけど、前座としてフォザリンゲイ、フェアポート、フリートウッドマック、フリー、ジェネシス、ファミリー、イエスなどのツアーに同行したり、70年にパリで行われたフェスにはピンクフロイドやプロコルハルムと共演したとの情報がある。最初期にはまだ有名になる前のデヴィッドボウイとの共演の情報も。

2ndが有名なんだけど70年1st「The Garden of Jane Delawney」がこれまた素晴らしくて、どちらも是非聞いてほしい。ロック要素もトラッド要素も強いプログレフォーク!

Jade

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70年に「Fly On Strangewings」を1枚残して71年に解散したJade。とにかくソングライターで中心人物のマリアン・セガールによる楽曲や声がサンディデニーにそっくりで、フェアポートの「Liege & Lief」が好きなら絶対気にいる1枚。女1男2の混声3声コーラスがとにかく美しい。トラッドソングはなくて、ほとんどがマリアンによるオリジナルソングであり、三種の神器らと同じくフェアポートやペンタングルに影響を受けた《二世代目のブリティッシュフォーク》といった感じだ。めちゃくちゃビートルズな曲も登場したりで面白い。他の情報はよくわからないんだけど、かなりお気に入りの1枚。

FLY ON STRANGEWINGS(紙ジャケット仕様)

Bridget St.John

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ブリジット・セント・ジョンという女性。この辺が難しくて、《フォーク》とは本来《民謡》の意であることは前にも言ったんだけど、その音楽が民謡の影響下にあるかどうかは置いておいて、弾き語りやシンガーソングライター、アコースティックギターといったスタイルなら《フォーク》と呼ばれるようになってしまった。そういったアコギ一本で弾き語るという《フォークスタイル》のイメージを形成したのは恐らくボブディランであるのだろう。

フォークリバイバルは「民謡を蘇らせよう」という動きであり、その流れの中で民謡風のオリジナルソングを歌い出したのがボブディランである。イギリスでもヴァシュティバニヤンなんかは明らかにトラッドの影響下でオリジナルソングを作って歌っているし、そしてやはりスタイルは《フォークスタイル》だ。

しかしもちろんアコースティックギターは民謡の為に誕生した楽器ではないので、《フォークスタイル》で民謡ではなくポピュラーミュージックを演るミュージシャンも山ほどいるわけで。それがトラディショナルソングではなくオリジナルソングである場合、民謡の影響下で《フォークスタイル》で演っているのか、それとも民謡の影響下ではなく例えばビートルズ等のポピュラーミュージックの影響下にある音楽を《フォークスタイル》で演っているのかを聞き分けるのは非常に難しいところだ。

例えばニール・ヤングがフォークに分類されることにずっと違和感があるんだよね…まぁでもそんな言葉上のことはどうでもいいじゃない、とも思うんだけど、米フォークはともかく英フォークに関してはキッチリしたいという思いもあって。

アメリカのフォークリバイバルというのはディランの功績もあって民謡のポピュラーミュージック化に成功した。しかしイギリスのフォークリバイバルは保守的な面を持ち、ポピュラーミュージック化していくことを避け伝統を強く守る動きが見受けられる。商業的には振るわなかったがその神秘的で独特な音楽は《英フォーク》という非常にはっきりとしたジャンルを作り出した。だからこそイギリスでは《フォーク》なのか《フォークスタイル》なのかははっきりしたほうがいいなぁと思ってしまうわけだ。そうゆう意味でニック・ドレイクやこのブリジットセントジョンなんかは難しいところだなーってずっと思っているんだよね。

これは今この5章で《英フォーク》について書いてるからこんなことを言ってるだけで、もちろんフォークじゃないからダメだとかそんな話ではなくて、そもそも僕はフォーク信者でもなんでもなくてただのロック好きなわけで。ニックドレイクもブリジットセントジョンも最高なんだけど《英フォーク》として書いていいのかという迷いみたいなもんで。しかも結局書くとゆー。

 

はい!ブリジットセントジョンは英SSW系では有名な方だとは思うんだけど、美しい高音ボイスの女性シンガーが多い英フォーク界の中、ハスキーなアルトボイスが魅力的なブリジットセントジョン。

ロンドンで弾き語りを始め、当時周りにはニックドレイク、ポールサイモン、デヴィッドボウイなんかがいたみたい。69年に「Ask Me No Questions 」でデビュー。

全曲ブリジット作曲で、ほぼ弾き語りのみで録られた1stを聞けばその魅力が十分伝わると思う。《英フォーク》じゃないんじゃないかって疑問を投げかけたんだけど、全くトラッドの要素がないわけでもなくて微かにその雰囲気も感じる。

74年までに4枚のアルバムをリリースするが、71年2nd「SONGS FOR THE GENTLE MAN」はピンクフロイドの「原子心母」のアレンジャーとして知られるロン・ギーシンがプロデュースしていたり、72年3rd「THANK YOU FOR . . .」ではフェアポートのデイヴ・マタックスがドラムを叩いてたりする。

ゲストボーカルとしてケヴィンエアーズの70年2nd「SHOOTING AT THE MOON」マイクオールドフィールドの75年3rd「OMMADAWN」なんかにも参加していてその辺とも親交があった様子。

Shooting at the Moon [12 inch Analog]

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意外とあった…

ちょっとCD棚とかApple Music眺めてたら意外と英フォークで書いといた方がよさそうなバンドがたくさんあって、さらさらっと紹介していこうと思ってたんだけど、タラタラ書いてしまったってのもあって、2回に分けます!今回はここまで!終わり!

英フォーク周辺図

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全体

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(意味不明、最初からやり直したい。)

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