ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

7-5 続・シスコサイケまとめ〜真のサイケデリック〜

7-5 続・シスコサイケまとめ〜真のサイケデリック

f:id:kenjironius:20191106015832j:image

前回の続きでシスコサイケのバンドを。

Country Joe&The Fish

f:id:kenjironius:20191106020058j:image

カントリー・ジョー・マクドナルド率いるカントリー・ジョー&ザ・フィッシュもシスコサイケの代表的なバンドだ。アコギを弾きながらフォークやカントリーを歌うカントリージョーとヘヴィなバンドサウンドが溶け合ったシスコサイケ。3大シスコバンドにモビーグレープとこのバンドを足して《シスコバンド5傑》なんて括られることもあるみたい(知らなんだ)。

67年1st「Electric Music for the Mind and Body」リリース。間違いなくシスコサイケの名盤。

ラブ&ピースなサンフランシスコ連中の中でも特に反戦イメージの強いバンドであり、そのイメージを決定付けたのが同年2nd「I-Feel-Like-I'm-Fixin'-to-Die」だろう。

マジカル系ジャケットなこの2ndの1曲目タイトル曲〝I-Feel-Like-I'm-Fixin'-to-Die〟は彼らの代表曲であり、『One, two, three, what are we fighting for?(1..2..3..何のために戦ってるんだ?)』と泥沼化していくベトナム戦争に対しての批判を込めて歌われるこの曲はラブ&ピースを掲げるヒッピー達のテーマソングとなった。

この曲の冒頭に入っているコール&レスポンスは〝The Fish Cheer〟と呼ばれる伝統芸のようなもので

「Gimme a F」

「F!!」

「Gimme an I」

「I!!」

…とFISHのスペルを順に客に言わせるという。こーゆーのは個人的に恥ずかしくてアレなんだけど、いかにこのバンドがヒッピー達の先導者的存在であったかを垣間見ることができる。

6曲目〝Janis〟はジャニスジョプリンについて歌った曲であるが、この当時カントリージョーとジャニスは恋人同士だったらしい。

69年にはウッドストックフェスティバルに出演し〝The Fish Cheer〟と〝I-Feel-Like-I'm-Fixin'-to-Die(カントリージョーの弾き語りだけど)〟も映像で見ることができる。

Steve Miller Band

f:id:kenjironius:20191106024459j:image

70年代半ばから80年代にかけて〝The Joker〟や〝Fly like an Eagle〟〝Abracadabra〟などのヒット曲を飛ばしたスティーブミラーバンドも60年代後半はシスコサイケバンドであった。

67年モントレーポップフェスティバルに出演し、クイックシルバーメッセンジャーサーヴィスと共にキャピトルレコードと契約し1stアルバム「Children of the Future(未来の子供達)」で68年にデビュー。

Children of the Future

1曲目タイトル曲の冒頭を初めて聞いた時、「こりゃまたヘヴィなイカれたバンドだなぁ」と思ったが蓋を開けてみると驚くほど繊細なサイケデリア。70年代半ばの全盛期のスティーブミラーバンドはシンセが目立つ《宇宙的なブルースポップ》というイメージだが、初期はオルガンが印象的なサイケデリックなブルースロックという感じだろうか。ただ《宇宙的》な要素は初期からも感じとることができ、スペーシーなブルースロックということでどこかピンクフロイドと通ずるところがあると僕は思っている。

68年2nd「Sailor」も同じ方向性なんだけど、この1stと2ndでは後にアダルトコンテンポラリーのシンガーとして一躍有名となるボズ・スキャッグスがギターとサブボーカルを担当していることはやはり触れておくべきだろう。

シャーラタンズダン・ヒックスがいたり、スティーブミラーバンドにボズ・スキャッグスがいたり、後々全く別の畑で活躍する人間もフラワームーヴメントの時代にサンフランシスコに集まってたんだな。

69年の3rdも良くて、スティーブミラーはただのブルースロッカーじゃない面白味があって割と好き。70年代から80年代にかけての全盛期もポップよりになるが嫌な感じもしない。

Blue Cheer

f:id:kenjironius:20191106044815j:image

元祖ヘヴィメタルとも言われる3ピースのヘヴィサイケバンド。とにかく半端ないファズギターとハイトーンなディッキー・ピーターソンのベースボーカルが特徴で3ピースでありながらジム・モリスンが「これまで見た中で最もパワフルなバンド」と称賛したブルーチアー。

《ブルーチアー(青い歓喜)》とは高純度なLSDを表す言葉であり、オウズリースタンレーの作るLSDがそう呼ばれていたらしい。

The Whoなどのカバーでも知られるエディ・コクラン〝Summertime Blues〟を激ヘヴィにアレンジしたカバーが有名で、それが収録された68年デビュー作「Vincebus Eruptum 」はヘヴィサイケの金字塔で、ヘヴィ系ロックの最重要アルバムである。

Vincebus Eruptum

Vincebus Eruptum

Amazon

ま、歴史を考えるとすごいけど、うっせぇ。

It's a Beautiful Day

f:id:kenjironius:20191106050342j:image

シスコサイケ勢の中では珍しくギターではなくバイオリンと鍵盤をフィーチャーしたシンフォニックなシスコサイケ。

女性ボーカルのパティ・サントス、バイオリンと男性ボーカルのデヴィッド・ラフラム、そしてその妻であるキーボードのリンダ・ラフラムを中心に67年に結成され69年に「It's a Beautiful Day」でコロンビアレコードからデビュー。

It's a Beautiful Day

It's a Beautiful Day

Amazon

とにかく1曲目の〝White Bird〟がシスコサイケを代表する曲の一つなった。ジェファーソンエアプレイン的な男女ツインボーカルも魅力の一つ。叙情的な雰囲気とシスコサイケな雰囲気のミスマッチが気持ち良い。

Kak

f:id:kenjironius:20191106052429j:image

これも割と人気の高い68年結成のサンフランシスコのヘヴィサイケ。

69年唯一作の「Kak」はシスコサイケファンに愛される1枚。

Kak-Ola

Kak-Ola

  • アーティスト:Kak
  • Big Beat UK
Amazon

ヘヴィなツインギターが特徴的であるが、その片割れのゲイリー・リー・ヨーダーはこの後ブルーチアーに加入する。

非常に力強いボーカルを持ったバンドで、アメリカらしい男臭さ満載。ヘヴィな曲から繊細な曲、組曲風の曲とバラエティに富んだ構成で素晴らしいアルバム。

Eric Burdon and the Animals

f:id:kenjironius:20191106163425j:image

ビートルズらと共に最初期のブリティッシュロックを支え、〝朝日のあたる家〟などのヒットで知られるアニマルズ。《ブリティッシュインヴェイジョン》の代表格でもあるバンドであったが66年に解散。その後サンフランシスコへと本拠地を移してEric Burdon and the Animalsと名を改めてシスコサイケシーンに降臨する。

67年Winds of Change」リリース。

アニマルズ時代からアメリカ色の強いバンドではあったが、アニマルズとしてのラストアルバム「Animalisms」と比べて聴いてみても明らかに全く違うバンドへと変貌を遂げたのがわかる。サイケもサイケ、ブルースを基調とした土系サイケでありながらブリティッシュ特有の空気感も持った独特なバンドが出来上がった。

エリック・バードン以外のメンバーはアニマルズの時とは代わっているんだけど、皆イギリス人であり、サンフランシスコで結成したわけではなく結成してから移ってきたんだろうけど、その辺のとこはあんまり知らない。ベースは後にFamilyに加入するジョン・ウィーダーである。

全員スーツのイメージが強かったアニマルズだがパイロットジャケットを着たり見た目も変わって、「猿やん。」って感じだったエリックバードンもめちゃくちゃかっこよくなるのよね。

タイトル曲〝Winds of Change〟やストーンズの〝Paint It Black〟のカバーなど素晴らしいが、とにかく僕はベトナム戦争に対するプロテストソングである〝San Franciscan Nights〟にやられた。最強。

活動は68年末までと短いが68年の2nd(?)「The Twain Shall Meet」も素晴らしい。

シングルとしてもリリースされた〝Sky Pilot〟は彼らの代表曲であるだろう。シングルではPart1,Part2に分割された7分に及ぶ組曲風の名曲。

68年ラストアルバムとなる「Love is」ジョニー・キャッシュの〝Ring of Fire〟やビージーズの〝To Love Somebody〟などのカバー曲で構成された2枚組アルバムであるが、全曲サイケデリックアレンジが素晴らしくてヴァニラファッジの1stと同様の面白さを持っているサイケアルバム。このアルバムでギタリストとして後にPoliceを結成するアンディ・サマーズが参加している。

エリックバードンはアニマルズ停止後、ファンクバンドWarEric Burdon&Warを結成し70年に「Eric Burdon Declares "War"」をリリース。独特なファンクサウンドを作り出し〝Spill the Wine〟がヒット。Warに関してはそこまで深く知らないが、TV番組かなんかのライブでエリックバードンが終始ショルダーバッグをかけてカウベル叩きながら歌ってるのが意味不明で覚えている。

終わり

こんなとこでしょうか。まだまだ腐るほどシスコサイケバンドはいるんだろうけど、僕が知るのはこれくらいかな。モビーグレープやエレクトリックフラッグは3大シスコサイケと絡めて軽く触れたのでスルーしたけど、サイケフォークなモビーグレープはもちろんオススメだし、ブルース好きならエレクトリックフラッグも刺さるはず。

真のサイケデリック、純正のサイケデリックと言えるシスコサイケは雑味とヘヴィさが気になって正直そこまでハマりはしなかったんだけど改めて見てみるとエネルギッシュなバンドがたくさんいて面白いなやっぱり。

ではシスコサイケのオススメアルバムをざっとまとめてお終いにします!

Grateful Dead 「Live/Dead」(1969)

Jefferson Airplane「Crown of Creation」(1968)

Quicksilver Messenger Service「Happy Trails」(1969)

Moby Grape「Moby Grape」(1967)

Dino valente「Dino valente」(1968)

David Crosby「If I Could Only Remember My Name」(1971)

Alex Skip Spance「Oar」(1969)

Big Brother & The Holding Company「Cheap Thrills」(1968)

Santana「Santana」(1969)

The Charlatans「The Charlatans」(1969)

Country Joe&The Fish「I-Feel-Like-I'm-Fixin'-to-Die」(1967)

Steve Miller Band「Children of the Future」(1968)

Blue Cheer「Vincebus Eruptum」(1968)

It's a Beautiful Day「It's a Beautiful Day」(1969)

kak「kak」(1969)

Eric Burdon and the Animals「Winds of Change」(1967)

こんなとこだろう。ロサンゼルスに移ってから作られたのでシスコサイケではないってことでボーブラメルズ「トライアングル」は外したんだけど、本音を言うと上記のどのシスコサイケより「トライアングル」がオススメなんだけどね!

f:id:kenjironius:20191107021246j:image

シスコ界隈図

f:id:kenjironius:20191107021541j:image

全体図(んー…)

次はLAサイケを!

Try Apple Music