8章はLAサイケ。前回はまず、その代表格といえるStrawberry Alarm Clockについて書きました。
ストロベリーアラームクロックの素晴らしさは幾らか伝わったと思うんだけど、その繋がりについては書けてなかったのでその辺りを。
8-3 イチゴ時計関連
リードギタリストとしてイチゴ時計サウンドの構築に大きく貢献し、2nd以降は作曲家としても力を発揮したエド・キングから。
Ed King
〝キング〟という名に相応しくちょい太っちょなエドキング。ストロベリーアラームクロックの末期、69年4thアルバムでは新ギタリストの加入に伴ってベースを弾くことになるものの彼がセンス溢れるギタリストであったことは間違いない。この時期の彼のギタープレイは同69年にリリースされたHunger!の唯一作「Strictly From Hunger」にて聴くことができる。
Hunger!
69年唯一作をリリースしたが、そのレコードはCD再発されるまで20年近く廃盤状態のレアアイテムであった。しかし今ではサイケ特集的なものでは度々ピックアップされるほどサイケファンの間では人気があるハンガー。
元々はオレゴン州ポートランド出身のバンドであるが67年にロサンゼルスに拠点を移し、西海岸サイケを存分に吸収したデビューアルバム「Strictly From Hunger」をリリースした。
このアルバムはまず68年にヨーロッパでリリースされたようで、それにエド・キングがギターを足して再編集されたものが69年にリリースされた。という経緯でエド・キングが関わっている。このエド・キング編集盤の方が「Lost Album」として再発されている。
で合ってると思うんだけど…「Strictly From Hunger」も「Lost Album」も曲目は同じで…なんせ僕はCD持ってなくて、昔はYouTubeで、今はApple Musicでハンガーを聴いてるのね…やっぱCD手にしてクレジットを見ないとなぁ。買うか!レコードも再発されてるようだし!
印象的なハモンドオルガンとファズギター、そしてメロウなメロディ。ドアーズにもストロベリーアラームクロックにも繋がる素晴らしき王道サイケ!間違いなくLAサイケの中でも質の高いアルバム!
ハンガーはこのアルバムを残して解散。
Lynyrd Skynyrd
サザンロックの雄、レーナード・スキナードのギタリストとしてエド・キングを知っている人も少なくないだろう。エド・キングは72年に加入し、73年の1stから75年の3rdまで在籍、レーナード・スキナードの特徴であるトリプルギターの1本を担った。
僕はこの辺のサザンロックやスワンプ ロックは全くで、レーナードスキナードも代表曲〝Sweet Home Alabama〟しか知らないくらいくらい。
そのエド・キング在籍時の74年2ndアルバムに収録された〝Sweet Home Alabama〟はニールヤングの〝Southern Man〟と〝Alabama〟に対する反抗ソングであることで有名。というか僕はそれで知ってるくらい。
公民権運動が進む当時のアメリカで、断固として黒人差別の姿勢を崩さないアラバマ州に対してのニールヤングの怒りの歌が71年「After The Gold Rush」収録の〝Southern Man〟と72年「Harvest」収録の〝Alabama〟であるが、それに対して「南部の人間はお前なんか必要としていない、アラバマ最高」と歌詞に〝ニールヤング〟という人名まで盛り込み歌ったのがレーナードスキナードの74年〝Sweet Home Alabama〟である。
このことからニールヤングとレーナードスキナードは『犬猿の仲』であると捉えられてる。が、実際は互いに尊重しあっていたようで77年に飛行機事故でレーナードスキナードのメンバー2人が死んでしまった時には追悼ライブでニールヤングが自身の〝Alabama〟と〝Sweet Home Alabama〟合体させ歌った。
レーナードスキナードももちろん当時のアラバマ州の情勢を良くは思っていなかっただろうし、何より彼らはフロリダ州のバンドである。「南部の人間全員がクソなわけじゃない」という思いが〝Sweet Home Alabama〟には込められているんだろう。そんな曲に対してカリフォルニア州出身のエド・キングはどんな気持ちだったのかは気になるところだ。
もう少し歳をとればサザンロックやスワンプロックにハマる時がくるのかな、その時にまたしっかりレーナードスキナードを聴ければと思う。
The Seeds
ストロベリーアラームクロックと共にカルトトリップ映画『Phych-Out』に出演したThe Seedsはロサンゼルスを代表するガレージサイケバンドである。65年にシンガーのスカイ・サクソンを中心に結成され、後に誕生するパンクロックに多大な影響を与えたバンドとしても知られる。
正直ガレージは苦手な部類に入ってしまうんだけど、67年3rd「Future」は好き。
ガレージサイケといえばやはり『Nuggets』だろう。「ナゲッツ」は60年半ば〜後半にリリースされたガレージサイケ系の曲を集めたオムニバスアルバムであり、ガレージサイケの入門盤と言える名盤である。72年にエレクトラレコードからリリースされた。
The Erectric Prunesや13th Floor Elevators,Blues Magoos,The Seedsなどのガレージサイケバンドを2,30組寄せ集めた2枚組アルバムだが、僕のガレージサイケはこの入門盤『ナゲッツ』で止まってる、って感じ(サジタリアスが入ってるのが割と謎)。
Spirits in the Sky
そんなThe Seedsのボーカル、スカイ・サクソンが2009年に死去。それを受けてのトリビュートバンドとして結成されたのがSpirits in the Skyというバンドであり、なんと中心人物はThe Smashing Pumpkinsのビリー・コーガンである。
このSpirits in the Skyの概要が調べてもイマイチわからないんだけど、ギターが元レッチリのデイブ・ナヴァロ、ベースがThe Erectric Prunesのマーク・トゥリンで、キーボードがストロベリーアラームクロックのマーク・ワイツであるというのだ。
世代を飛び越えたトリビュートバンドで、いかにスカイ・サクソンという男が愛されていたかがわかるが、スマパンってシカゴのイメージが強いのでびっくり。ちなみに僕は60's,70'sばかりをこのブログで書いてるがスマパンは大好き。
Spirits in the Skyについては理解できてない点が多いので詳しいことがわかればまた書きます。明らかにお爺ちゃん2人混ざってるけど大丈夫か…とか思ったけどビリーコーガンもデイブナヴァロも割といい歳か!
The Erectric Prunes
そんなスカイサクソン追悼バンド、Spirits in the Skyにマーク・ワイツと共にベースで参加したマーク・トゥリンというお爺ちゃんが元々いたのがThe Erectric PrunesというLAサイケバンドである。先述のガレージサイケコンピ『Nuggets』にもトップバッターに選ばれている。65年にLAで結成されたヘヴィでガレージなサイケバンドだ。
やはりこのバンドもそこまでのめり込めてはないが、68年3rd「Mass in F Minor」は強烈。
「Fマイナーでのミサ」というタイトルのこのアルバムは教会音楽をヘヴィサイケで表現したものであり、1曲目の〝キリエ・エレイソン〟には衝撃を受けた。
《キリエ・エレイソン》とは【主よ、憐れめよ】という意のキリスト教における重要な祈りの一つであるが、キリエ・エレイソンというと僕はジュディ・シルの〝ドナー〟を思う。あれ以上の祈り、あれ以上のキリエ・エレイソンはない。がしかしThe Erectric Prunesの〝キリエ・エレイソン〟も祈りとヘヴィサイケが混ざった唯一無二の世界観なのでオススメ。
Oingo Boingo
最後に。ストロベリーアラームクロックの1st,2ndでフルートを吹き、作曲にも多数貢献したスティーブ・バーテックがギタリストとして参加したロサンゼルスのニューウェーブバンド、オインゴ・ボインゴ。
80年代、アメリカのニューウェーブを代表するダニー・エルフマン率いるオインゴ・ボインゴであるが、名前はよく聞くけどほぼ知らない。ニューウェーブか…また聴いときます。
ストロベリーアラームクロック関係、終わり!
レーナードスキナード、スマパン、ニューウェーブとLAサイケ外への関係性も見られるストロベリーアラームクロック、偉大なバンドです!
(ストロベリーアラームクロック周辺図)