ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成

9-5 Blues Magoos〜3大ファーストサイケデリック〜(第56話)

9-1にてテキサスのトゥクトゥクサイケ13th Floor Elevatorsについて書いた際に彼らの66年1stアルバム「The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevatorsサイケデリック】という言葉をアルバムタイトルに使った最初のアルバムである、という話に触れた。

「9-1 イカれたテキサス・サイケ〜The 13th Floor ElevatorsとThe Red Crayola〜(第52話)」

https://kenjironius.hatenablog.com/entry/2020/01/16/011200

 

しかしこの『最初にサイケデリックの言葉を使ったアルバム』という文句で紹介されるアルバムはこの13thフロアエレベーターの1stの他にも存在している。もちろん同時にリリースされたわけではないので矛盾しているが、こういうことは別に珍しいことではない。例えば『世界初のロックオペラだとか『世界初のコンセプトアルバム』だとか、そういった売り文句で紹介される作品は複数あったりするもんで、〝時系列が明確じゃないから複数説あるもの〟や〝レコーディングはこっちが早いがリリースはあっちが先だ〟とか〝答え出てるけど2番手じゃインパクトないからこいつも言っちゃえ!〟的なことなんかからこういった矛盾はロック史にも存在してしまっているわけだ。

僕はこれを念入りに調べて正しく整頓するまでには几帳面ではなくて、大抵はたかだか数週間のリリースの差であるので〝最初期群〟的なグループでまとめてしまっている。

 

そんなわけで僕が『最初にサイケデリックの言葉を使ったアルバム』という括りでカテゴライズしているのが

13th Floor Elevators「The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevators

Blues Magoos「Psychedelic Lollipop」

The Deep「Psychedelic Moods」

の3枚だ。

全て66年にリリースされたもので、13thとブルースマグースが11月(ブルースマグースが少し早い?)、ディープが10月(不確か)との説があるが、まぁ《3大ファーストサイケデリックとでも名付けてみようか。

ちなみにこれより早いサイケアルバムとされるものではバーズ「霧の5次元」が66年7月、ビートルズリボルバードノヴァン「サンシャインスーパーマンが66年8月リリース、サイケに分類するかは意見が分かれるだろうが66年5月のビーチボーイズ「ペットサウンズ」などがある。なわけで66年10月〜11月リリースの《3大ファーストサイケデリック》はあくまで【サイケデリック】という言葉をアルバム名に使ったのが最初であって、音楽としてのサイケデリックロックのパイオニアではない。とはいえ66年にサイケデリックロックを鳴らしていたことは早いことには違いないし、何より《サイケデリック》という言葉をロック界に持ち込んだ功績は大きい。ビートルズやドノヴァンやバーズが66年に作り出した《新たな雰囲気のロック》サイケデリックロック》であると認識付けたのだから。言葉の効果というのは大きいものでLSDによるサイケデリック現象を音楽化したロック〟という縛りとヒントを与えたことで後続バンドや聴衆は《新たな雰囲気のロック》の実態を掴むことができ、ブーム化することに成功したと言えるだろう。

 

さて、僕はここまでアメリカンロックは西海岸こそが本場である!というスタンスをとってきた。しかしながら《3大ファーストサイケデリック》の3組はどれも西海岸のバンドではなく、13thフロアエレベーターズがテキサス、Blues MagoosとThe Deepがニューヨークのバンドである。

シスコサイケの代表ジェファーソン・エアプレインの1st「テイク・オフ」も66年にリリースされているがこちらはまだフォークロックと言えるアルバムであるし、LA代表The Doorsも67年デビューである。確かにヒッピームーヴメントの聖地と呼ばれるサンフランシスコやハリウッドがあることで多数の職業音楽家を有していたロサンゼルスで《サイケロック/ソフトサイケ/エクスペリメンタル》が67年,68年に爆発したが、発端は東であったのだ(まぁ西海岸にはバーズとビーチボーイズがいたんだけども)。

そんなわけで66年、黎明期のアメリカンサイケにおいて非常に重要な3組について書きたいが、13thフロアエレベーターズは以前書いたので省略して、Blues Magoosから!

 

9-5 Blues Magoos〜3大ファーストサイケデリック〜(第56話)

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見よ!このブライアンジョーンズが5人居るかのようなマッシュルームバンドを!

【Magoos】って言葉について調べてみたら、どうやらスラングのようで【大物】という意味らしく、〝ブルースの大物〟というなんとも大層なバンド名のBlues Magoos。

64年にニューヨークにて結成され66年デビュー、11月にマーキュリーレコードから1stアルバム「Psychedelic Lollipop」をリリース。これが《3大ファーストサイケデリック》の1枚である。

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バンド名の通りブルース色はあるもののそこまで強くはなくて、ガレージロックに含まれるが割とパッケージングされている、という非常に分類の難しいバンドである。ブルースっぽいんだけどポップで、ガレージっぽいけどギターがクリーンなので聴きやすくて僕は好きな部類なのよね。Ralph Scalaのオルガンが印象的であり、ギター/ボーカルのEmil “Peppy” Theilhelmが当時16歳というのも衝撃的。

 

1曲目〝(We Ain't Got) Nothin' Yet(邦題:恋する青春)〟はアルバムに先がけてシングルリリースされ、アメリビルボードチャート5位、カナダで4位を記録した彼らの代表曲である。冒頭のリフを聴いてもらえばすぐわかると思うんだけどディープパープルの70年〝Black Night〟にそっくりで「この曲が〝Black Night〟の元ネタになってんのかー」と思ったら、双方リッキーネルソンの62年〝Summertime〟が元ネタのようで聞いてみたら納得(まぁ〝Black Night〟はリフよりもドラムが重要だと思うが)。

2曲目〝Love Seems Doomed〟は頭文字がLove Seems Doomed〟LSDになっているメランコリックなサイケソング。サイケソングには頭文字LSDソングがいくつかあるが、その最も有名なのがビートルズLucy in the Sky with Diamonds〟だろう。〝Love Seems Doomed〟〝Lucy in the Sky with Diamonds〟には頭文字がLSDであることに加えて、メランコリックな3拍子、からのサビ4拍子、と共通点が多い。〝Lucy in the Sky with Diamonds〟は67年であるのでブルースマグースの方が早いわけで、ビートルズが影響を受けたとしか考えられないがどうなんだろうか。何にせよこの後67年,68年にいくつか登場する頭文字LSDソングの走りであることは間違いない!

3曲目〝Tobacco Road〟John D. Loudermilkというミュージシャン(知らない、カントリー系の人なのかな?)のカバーであるが、この曲のブルースマグースによるカバーがガレージコンピ『Nuggets』に13thやElectric Plunesらと共に収録されている。最初聴いた時「なるほど、この曲のメロと〝(We Ain't Got) Nothin' Yet〟のリフを合わせてディープパープルは〝Black Night〟を作ったんだな!」と思ったんだけど、上に書いたように違うみたい(だがまだ疑っている!!)。〝Tobacco Road〟はジェファーソンエアプレインも同年に1stアルバムでカバーしており、70年にアニマルズのエリックバードンが組んだサイケソウルバンド、Eric Burdon and Warもカバーしている。他にも様々なバンドがカバーしていて〝Hey Joe〟のようなロックスタンダード的な曲のようだ。ちなみにデヴィッドボウイ〝Jean Genie〟のリフはこの曲から盗んだもののようだ。

4曲目Queen of My Nights〟デヴィッド・ブルーというフォークシンガーの曲である。デヴィッドブルーについてはあまり知らないが、前回ガンダルフへ曲を提供したことで紹介したティム・ハーディンと同じくフォークの聖地であるニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのフォーク界隈にいた人物のようである。原曲を調べてみたが見当たらないのでカバーというよりは曲提供なのだろうか。この曲はこのアルバムで1番好きな曲なんだけどとにかくめちゃくちゃスミスっぽいのよね。Apple Musicのランダム再生とかで流れてきたら「あれ?こんな曲スミスにあったっけ…」ってなるくらい。ブルースマグースのメインボーカルは曲によって変わってるようで誰がどの曲で歌ってるかまでは知らないが、この曲の歌い手は歌い回しも声もめちゃくちゃモリッシーっぽい。そしたらコーラスがかったギターアルペジオもそんな風に聴こえてきて、スミスがブルースマグースの影響を受けてるかは定かではないがタイトルに【Queen】の言葉が入ってるあたりスミス86年The Queen Is Dead」を連想してしまうのは仕方ない。

5曲目〝I'll Go Crazy〟はソウルキングジェームス・ブラウンのカバー。

6曲目〝Gotta Get Away〟アラン・ゴードン作曲のガレージナンバー。アラン・ゴードンは前回ガンダルフ及びピーター・サンドへの曲提供でも名前が出たが、1番有名なのはタートルズ〝Happy Together〟の作曲だろう。他にもラヴィンスプーンフルなんかにも曲提供しておりニューヨークのロック界隈で重要な作曲家である。この曲は「ヘイ(ヘイ)ヘイ(ヘイ)ヘイ(ヘイ)」というアホっぽいコーラスの掛け合いが印象的でガレージ感満載。

他にもスローブルースでねちっこい7曲目〝Sometimes I Think About〟やブリティッシュ風の8曲目〝One by One〟などオリジナル曲も良い曲が多くてサイケデリックでメランコリックで時折ガレージなロリポップを楽しめる「Psychedelic Lollipop」

セールスはビルボード21位となかなかの滑り出しであった。

 

その後

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67年に2nd「Electric Comic Book」、68年に3rd「Basic Blues Magoos」をリリースしているが1stほどのセールスは得られずバンドは停滞。2ndではヴァンモリソン〝Gloria〟を、3rdではThe Move〝I Can Hear the Grass Grow〟をカバーするなど興味深い点はあるが、この辺はまさにブルース色の強い《ガレージサイケ》って感じであまり聴けていない。

68年にはバンドは分裂したようだが残ったメンツで69年に4th,70年に5thをリリースしてブルースマグースは解散。

 

てな感じで正直1st以外はほとんどまともに聴いてなくて、《3大ファーストサイケデリック「Psychedelic Lollipop」はその肩書きと意外とメランコリックな内容に惹かれて割と気に入ってるが、その後は特に目立たない《ガレージサイケ》バンドになってしまった、ってのが僕の持つイメージ。

 

繋がりを調べてたらブルースマグースのオルガンのラルフ・スカラは68年のブルースマグース分裂時に西海岸に渡り、70年ごろにThe Dependablesというバンドを結成したようなのよね。そのThe Dependablesの中心人物がThe Millenniumジョーイ・ステックだってゆーんでびっくり!71年に1枚アルバムをリリースしてるのでまた聴いてみよう。ジョーイ・ステックはミレニウムでは〝To Claudia On Thursday〟〝It's You〟の作曲に関わってるので期待大です!

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以上!次は残り一つの《3大ファーストサイケデリックThe Deep(及びFleak Scene)を!