ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

ブルースについて考える

チャーリー・ワッツの死

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毎週のように往年のロックミュージシャン達がこの世を去っていくことに寂しさを感じるこの頃だが、チャーリー・ワッツの死は特に考えさせられるものがあった。

僕はローリング・ストーンズをほとんど聴かない。それでもチャーリーの死はボウイの死よりもルー・リードの死よりもある種ズドンときた。それはローリング・ストーンズ〝ロックの象徴〟であるからなのだろう。あの黄金のロック時代の〝アイコン〟として未だ活動を続けているストーンズの守護神が死んだことは時代の終わりをはっきりと見せつけられたような感覚を与えられた。「ロックの時代が終わった」ことはもう随分前から気づいていたが、それをはっきりと突きつけられたような。

ローリング・ストーンズ

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僕はローリング・ストーンズをほとんど聴かない。その理由はストーンズがロックの〝アイコン〟すぎるからだ。もちろん彼らのおかげでロック文化が広がったと思うが、彼らのせいでロックが軽視されている、とも思ってしまう。「これがロックだと思わないでくれ」という想いがどうしても湧いてしまうのだ。日本でいうとJロックファンにとっての矢沢永吉がそれにあたるんじゃないだろうか(双方のファンにぶち殺されるかも、あくまで個人的な意見です!)。正直ストーンズこそがロックだ!という人間は信用できない(あかん、止まらん)。

とはいえ好きな曲やアルバムももちろんある。やはり黄金の60年代後半、66年『アフター・マス』〜68年『サタニック・マジェスティーズは実験的な野心が見えて面白い。〝Paint it Black〟〝夜をぶっ飛ばせ〟なんかはすごい曲だと思う。68年『ベガーズバンケットから『山羊頭のスープ』までのいわゆる全盛期はそこまで好みではないが『Let It Bleed』は全ロックアルバムの中でも好きなアルバム。

この辺はスワンプ志向でカントリーやゴスペルなんかと接触していくが、これが結構ハマってると思う。ただ〝ストリートファイティングマン〟〝ブラウンシュガー〟のような70'sストーンズを想起させる曲なんかはただの遅いロックンロールじゃん、と思ってしまう。それならT-REXのほうがイカしてるぜ、って。

で、ストーンズで1番好きな曲となるとダントツで〝She's a Rainbow〟になる。

ニッキー・ホップキンスのピアノとジョン・ポール・ジョーンズのストリングスアレンジが色鮮やかに舞う素晴らしいサイケポップだ。こう書くともはやストーンズが関係していない曲のように思うが、その鮮やかなピアノとストリングスにミックの歌が絡むからこその名曲だと思う。

音楽と色とブルース

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《色》というのが僕にとってはとても重要なものなのかもしれない。別に共感覚があるとは言わないが、音楽を聴いて《色》を想起させるメロディやアレンジに心を奪われるところがある。

僕がブルースを苦手とする理由について考えているとそんな答えに辿りついた。僕がブルースを敬遠しがちなのは《色》を感じないからなんじゃないか、と思うのだ。

 

ブルースについて考える

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ブルースに色を感じない要因は12小説3コードという形式と5音のみで構成されたスケール(ペンタトニック・スケール)というルールにあるのかもしれない。浮遊感とは真逆の土着感、死角から脳天を突き刺すような魔法はない。だからこその美意識は確かにあり、そのルールの中で演者が、とくにギタリストが出す味と魂が1番の魅力になっている。僕だってブルースを「渋い!」「かっこいい!」と思う感性はある、が。

 

ロックのイメージ

《ロック》という音楽は一般的にどんなイメージを持たれているだろうか。エレクトリックであり、うるさくて激しい音楽だろううか。

僕は「エレクトリック」と「激しさ」に加えて「ギター」と「ブルース要素」というのがロックのイメージに多く含まれていると思っている。そしてそのことに不安を感じているのだ。

僕はある時期から激しい音楽やブルース要素の強い音楽をあまり聴かなくなった。しかしそれでも「ロック好き」であるという自覚は今まで一度も揺らいだことはない。

ロックが激しい音楽だ、という印象が根付いたのは〝You Really Got Me〟のせいかもしれないし、ギターやブルースの印象が強いのはストーンズやクラプトンのせいかもしれない。

その印象が先行しすぎたせいで「ビートルズってロックなの?」という輩がいまだに存在しているのだ。ブルースの香りがしなければポップス?そんなことはない。ブルースはロックの一要素でしかないのだ(もちろん大事な大事な一要素ではある)。

 

ロックとブルースの関係

ロックはブルース、ジャズ、R&R、カントリー、R&B(ソウル)、フォークといったアメリカ音楽や50年代イギリスで流行したスキッフルを土台に60年代頭にイギリスで生まれた「全く新しいポピュラーミュージック」であるというのが僕の認識だ。

やはりロック第一人者として祭り上げられるビートルズを例に挙げると、彼らの63年初期2枚はR&Rやモータウン等のR&B(ソウル)の影響が強く反映されている(そこからのカバーも多く収録)。R&RやR&Bはブルースから派生したジャンルであるので、ビートルズの楽曲にももちろんブルースの要素は多分に含まれている。

ブルースは1900年前後に黒人が生みだした。それが白人音楽のカントリーと融合して1950年代に誕生したのがR&R。ブルースやゴスペルにリズム/ビートを足して1940年代末に生まれたのがR&Bだ。ブリティッシュロック第一世代が生まれるきっかけとなったスキッフルにもブルース要素は含まれている。

ビートルズはブルースから直接影響を受けたというよりもR&R、R&B経由でブルース風味を受け継いでいったと言える。他にもカントリーのハーモニーやトラッドジャズのコード進行など様々な要素をビートルズは吸収して新たな音楽を作り出していった。そして64年『ハード・デイズ・ナイト』の頃には全く新しい《ロック》と言える音楽が出来上がっていたのだ。

そしてブリティッシュインヴェイジョンでアメリカに渡り、以降英米でキャッチボールを繰り返しながらロックはさらに多くの要素を吸収していった。

ビートルズ65年『ラバー・ソウル』でロックは芸術の領域に足を踏み入れ、66年ビーチボーイズ『ペットサウンズ』でロックは精巧さを手に入れた。

ビート文学を取り入れ、サイケデリックに染まり、クラシックを取り入れ、60年代末にはロックはとてつもないアートジャンルに育っていった。それはブルースやカントリーやR&RやR&Bの要素は含めど、ルーツとなったそれらとは似ても似つかない新たな音楽となっていた。

何が言いたいかというとブルースはロックを形成する数々の要素の一つでしかないということだ。

 

ブルース・ロック

ブルースは1900年前後にアメリカで黒人の魂の叫びとして誕生し、様々な地方で独自の成長を遂げた。

その魂がR&R、R&Bといったポピュラーミュージックに受け継がれていく中で純度を保って受け継がれたのが1950年ごろにシカゴで誕生したシカゴ・ブルースだ。シカゴ・ブルースはブルースをアコギからエレクトリックギターに持ち替え、バンド形態で演奏したのが特徴的で、マディ・ウォーターズがその代表的なブルースマンである。

ただまだその頃のブルースは「黒人の音楽」という印象が強く、白人ブルースがブームとなるのはもう少し後で、そしてそのブームはアメリカではなくイギリスで起きた。

1961年に後に「ブリティッシュ・ブルースの父」と呼ばれることとなるアレクシス・コーナーがブルースバンド、ブルース・インコーポレイテッドを結成、その影響を受けてジョン・メイオールが62年にブルース・ブレイカーズを結成した。

ブルース・インコーポレイテッドにはジャック・ブルースチャーリー・ワッツが在籍し、ミックキースブライアン・ジョーンズといったストーンズのメンバーもアレクシス・コーナーの門下生のようなもの。ブルース・ブレイカーズにはエリック・クラプトンや後にフリートウッドマックを結成するピーター・グリーンらがいたり。この2つのバンドからクリームストーンズフリートウッドマックといった後にブリティッシュブルースロックを牽引していくバンドがいくつも生まれたわけだ。フリーもそうだったかな?

彼らはR&R、R&B経由ではなく、直でブルースを取り入れてそれをロック化したバンドである。感覚的には「古い音楽」を現代に甦らせた、といった感じだ。ロック自体が元々ブルースと密接なわけではなく、彼らがそれらを密接にさせたブルース・ロックを演ったのだ(初期ストーンズはかなりR&B色が強かったが)。アメリカではポールバターフィールドブルースバンドなんかがその先駆者か。何にせよ古い音楽だったブルースを60年代にイギリス人がブームにし、その影響で本国アメリカでもブルースブームが到来する。

特に加熱したのは60年代後半からで、イギリスではクリームやフリートウッドマックやフリーが誕生し、アメリカでは多くのサイケブルースバンドが誕生、70年代にはさらにそこからハードロックが誕生することになる。69年にロックがルーツ化に向かったことや、ジミヘン、クラプトン、ジミー・ペイジといったブルースギターヒーローが多く誕生したこともロックにおける《ブルース崇拝》の大きな要因だろう。

 

さて、何が言いたいかというと、このロックにおける《ブルース崇拝》のイメージは大抵70年代ロックファンによるものだということだ。60年代ロックファンはブルースがロックを形成する一要素だということを知っているが、70年代ロックファンはブルースこそがロックの原点であると信じてやまない感がある。

ん?こんなことを言いたかったんだっけな……とにかくロックにおける過度なブルース崇拝に一石投じてみたかっただけで、こんな視点もどないでしょうという話だ。まぁ実際にはそうは言ってもロック好きならブルースは避けて通れないのは間違いない(どないやねん)。ブルースロック、ルーツロックのみならずハードロックにもガレージにもパンクにもブルースは多分に含まれてるわけだからね。

 

なわけでこんな僕でも好きなブルースがあるわけで、それを羅列していこうかと思ったんだけど長くなりそうなのでひとまずここまで!

では!

R.I.P チャーリー!!!

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