映画『Brown Bunny(2003)』サウンドトラック

ちょっと時間が空いたから中古レコード屋でも行こう、っていって、はれ、おれって何が欲しいんだっけか、となることが最近多い。
なんかCDかレコードか買おうかなーなんてネット開くけど、検索ボックスに何の文字を打ち込めばいいかわからない時が。
正直本当に欲しいアルバムはほとんど買った。欲しい!って思った瞬間にネットでポチッとできるのが今の時代だから。
だから、おっ!こんなんあったな、とか、あ、そういやこれ持ってないな、とか、
出会いとタイミングで買うことばかりが最近増えてきたように思う。
そういう意味では品揃えのいいレコード屋よりも、セレクトショップ的なレコード屋のほうが〈出会い感〉は強かったりする。
品揃えなんか多い方が良いに決まってるんだけど、こういう事象もあるから商売って難しい。
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映画『Brown Bunny(ブラウンバニー)』を観たのは多分高校生の頃。おそらく初めて観たインディ映画で、「ふーん、これがサブカルチャーか」と(いまだにサブカルチャーとはどこを指すのかわかっていない)。
昔から今まで僕は一切映画にのめりこんだことはないので、この映画と出会ったのはやっぱり音楽関連だった。
この映画の監督&主演はヴィンセント・ギャロという俳優で、彼はミュージシャンでもありアーティストでもあり、ジョン・フルシアンテの親友でもある。
高校生当時ノリにノったレッチリに僕も漏れなく夢中で、特にジョンフルシアンテに夢中だったもんだから、ジョンフルシアンテがサントラを手がけたというこの『Brown Bunny』のDVDに手を出したわけだ。
内容はわけのわからないロードムービーで、終盤のエロシーンに唖然として、そしてジョンの曲は一切流れず。
なんだこれ、だけど、なんかすごいかもしれない感じに溢れた映画だった。 固定カメラ演出のアングラ感満載な空気感は当時結構衝撃的だったような。
後から調べると、ジョンはヴィンセントギャロのためにサントラを書き下ろし、ギャロはそれを聴きながら『ブラウンバニー』を撮ったと。なのに作中ではジョンの曲を使わず、しかしサントラ盤には収録されてると。
なんじゃそりゃって感じだけど、そんなことすらもなんかイケてると思っていたのが当時だった。
なんにしても結局そのサントラ盤までは聴くことなく、それから20年弱、「『ブラウンバニー』、イカれた映画だったなぁ」という記憶だけが片隅にあった。
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そんでついこないだ、友人に誘われて神戸のディープタウン新開地の立ち飲み屋にいった。
なんともパンキッシュな立ち飲み屋でぐびぐび飲んでると、「ここ2階でレコード売ってるで」というので上がらせてもらうことに。畳の部屋にレコードとCDが100枚ずつほど置かれていた。
私物の処分にも近いようで、全てありえない価格で売られている。友人は以前ここでYesの『危機』のレコードを300円で持って帰ったそうだ。
こりゃ今夜はいいものと出会えそうだ、と立ち飲みを中断して15分ほどディグらせていただいた。
マハヴィシュヌオーケストラ1stのレコード
ロバートプラントのソロ2ndのレコード
ポールバターフィールドバンド2ndのCD
そしてブラウンバニーのサントラ
全部激安、ラッキーな出会い。
あ、ブラウンバニーのサントラやん。あったなそんな映画。そーいや結局この映画に書き下ろしたジョンのソロ聴いたことなかったやんな。挿入歌も60'sでよかったし、こりゃ買いやな。
ってな感じで持ち帰ったブラウンバニーのサントラ、これが案外めっちゃよかったのです。
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映画『Brown Bunny(2003)』サウンドトラック

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ブラウンバニーを観た数年後、もう一つのヴィンセントギャロ監督主演作品も一応観ている。
『バッファロー66(1998)』。こっちが処女作、ブラウンバニーが2作目になるのだろうか。
『バッファロー66』も変な映画だったけど、とにかくプログレッシブロックの名曲が流れていたのが印象強い。ボーリング場でキングクリムゾンの〝Moon Child〟が流れる謎のシーンが強く脳裏に焼きついている。あとYesの〝Heart of Sunrise〟と〝Sweetness〟も確か流れていた。
〝Sweetness〟の選曲にギャロはロック好きとしてかなり信頼できる男だと確信したのも覚えている。
それで、ブラウンバニーの挿入歌はというと、正直高校生当時は知ってる曲はなかったし記憶にも残っていない。
それでこの度買って「どうせ60's70'sの名曲使ってるんやろ、わくわくするぜい!」と曲リストを見てみると知らない曲ばっかり。唯一知ってたのがゴードンライトフットの〝Beautiful〟くらいで、後は知らない曲ばっかり。
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1.Come Wander with Me/Jeff Alexander(1964)
ガットギターのアルペジオに乗せて女の人が歌うめっちゃええ曲。
クレジットにあるジェフアレクサンダーという人はこの曲の作曲家のようで、調べてみると歌ってるのはボニー・ビーチャーという女優であるよう。
ジェフアレクサンダーは映画音楽とかTV音楽とかの作曲家のようで、この〝Come Wander with Me〟はアメリカのTVドラマ『The Twilight Zone』の中で使われたものであるらしい。
The Twilight Zoneについてはよくわからないけど、1959年から64年まで放送されたドラマで、オムニバス形式のSFドラマだとか。ストーリーごとに別の俳優が主人公を務めるみたい。『世にも奇妙な物語』みたいなものだと認識したけど、あってるかはわからない。
〝Come Wander with Me〟は1964年にThe Twilight Zoneの最後のオリジナルストーリーで歌われた楽曲で、そのストーリーの主演が ボニー・ビーチャーだった、ということみたい。ミュージカル形式の劇中歌みたいなもの。
動画ありました↓
めっちゃええ曲。
ブラウンバニーでの使用シーンはこれみたい↓
曲の最後は何度かハミングを繰り返して終わるんだけど、ブラウンバニーではそのハミングのとこだけを使ったみたいですね。
ボニービーチャーという女優について調べてみたところ、1941年生まれミネソタ州出身、ボブディランの同級生だったそう。
ディランは60年に大学を中退してニューヨークへ飛び出すわけだけど、その短い大学時代にボニービーチャーと出会ってデートしたことがあるとか。ディランの60年当時のブートレグ音源ではボニービーチャーの歌が聴けるとか。ほえーでございます。
『バッファロー66』を観てから、ヴィンセントギャロはプログレ及び古いロックが好きなんだろうなーと感じていたけど、60年代初頭のTVドラマの曲を引っ張ってくるあたりシンプルに音楽マニアのようだ。
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2.Tears For Dolphy/Ted Curson(1964)
2曲目は60'sジャズ。トランペッターのテッドカーソンが64年に死んだエリックドルフィーに向けて書いた追悼曲らしい。
ジャズに詳しくないので、この曲がどれくらい有名な曲なのかマニアックな曲なのかもわからないけど、とにかく美しく悲しい曲。
重い苦しみみたいなものが表現される曲だけど、途中アホみたいになるパートがあって、それがより悲しい。名曲。
こういう出会い方から少しずつジャズに手を染めていくのも悪くないかもしれない、なんてことを思った。
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3.Milk And Honey / Jackson C Frank(1965)
ジャクソン・C・フランク。いやーしらなんだな。65年にポールサイモンプロデュースで1枚アルバムをリリースし、そのあとは統合失調症と鬱に悩まされホームレス同然の暮らしをして散っていった男。〈60年代で最も忘れられたソングライター〉と言われているとか。
11歳のころに小学校で火事が起きて、15人の仲間が死亡し、自身も体の50%を火傷、副甲状腺に支障をきたし、長年その後遺症に苦しめられたとか。
唯一作がリリースされた65年はポールサイモンもジャクソンCフランク(どちらもアメリカ人)もイギリスに住んでいて、レコーディングもロンドンで行われたよう。
そんなことからかイギリスのフォークシーンで少し話題になったようで、サンディデニー、ニックドレイク、ジョンレンボーンらブリティッシュフォーク勢がフランクの曲をカバーしてるみたい。
サンディデニーがカバーしたのはフェアポートコンヴェンション以前の67年みたいだけどちょっとまだ詳細よくわからん。YouTubeは発見した↓
サンディとフランクは恋人関係にあった時期があるらしく、フランクはまだ看護師として働いていたサンディに音楽に専念するよう背中を押したとか。
ニックドレイクは死後リリースされた未発表音源集の中でフランクの曲を4曲カバーしてるみたいで、かなり心酔してた模様。
幼いころの火事だとか病気がどこまで音楽に表れているかはわからないが、暗く、狂気を孕んだ美しさはそういえばニックドレイクへと繋がるものがあるかもしれない。
こんな重要人物を今まで知らなかったのは悔しい。そして映画のサントラって形でこうして出会えたのはラッキー。
すぐさまポチッとLP買いました。ネットショップを見る限り後々になってデモ集やら未発表曲集やらのコンピも出てるみたいで、まぁそれはオリジナルアルバムを聴き込んでからですな。
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4.Beautiful/Gordon Lightfoot(1972)
暗くて重くて美しい曲が続いたブラウンバニーサントラだけど、この曲には救われたような爽やかさがある。
ゴードンライトフット、この人もいいフォークシンガー/SSWです。まじでええ曲。
ゴードンライトフットはバーバンクサウンドを掘っていく中で出会って、このBeautifulが収録されているアルバム『Don Quixote』もサブスクで結構聴いていた。
この曲はカナダチャートで13位(ゴードンライトフットはカナダ人)、米ビルボードで58位を獲った曲なので、まぁ他の曲よりは有名な曲といえるか。
いやしかしゴードンライトフットも忘れられたソングライターの1人じゃなかろうか。60年代の米フォークシンガー/SSWは結構埋もれてしまいがちな気がする。フレッドニール然りティムハーディン然り。
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5.Smooth/Matisse Accardo Quartet(2002)
ジャズ。
これも60年代とかかしら、と調べてみたけどほとんど情報がない。このアーティスト名を検索かけてもブラウンバニーの情報が上に出てくる感じで。
確かか不確かかわからぬが、2002年にリリースされたイタリアンコンテンポラリージャズという情報が出てきた。わからぬ。
しかしなんとも他の4曲にマッチした空気感。
ブラウンバニーは憂鬱でピュアで狂気も感じるエロティックなロードムービーで、非常に独特な雰囲気と感情を表現した映画なんだけど、そのなんともいえない澄んだ重さと見事にマッチした選曲だと思う。恐るべしヴィンセントギャロ。
ロードムービーサントラは本当にドライブBGMに最適で、僕もここ数週間車で聴いてるけど、どんどん目が虚になっていって事故りそうになります。
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6〜10.ジョンフルシアンテ曲
映画では使われず、このサントラのみに収録されたジョンフルシアンテによる5曲。なのでこのサントラの目玉は必然的にこの5曲になり、僕もそのつもりで買ったんだけど、シンプルに映画で使われた挿入歌(1〜5曲目)が良すぎてジョンはただのおまけって感じになってしまった。
変拍子系のアコギミニマルフレーズにアドリブっぽい歌を乗せた〝Forever Away〟
まさにこの時期、『By the Way』期のレッチリ!って感じの歌メロに電子音とかを装飾した〝Dying Song〟
などなど、ジョンフルシアンテの宅録感満載の曲たち。やっぱジョンのこと好きだから良いと思うし、らしいところが嬉しいし。
だけど、歌詞をまだよく掴めてないからわからないけど、どの辺が映画『ブラウンバニー』に影響を与えたのかはよくわからない。逆に映画を撮り終えた結果、このジョンの曲を使わなかったのはわかる気がする。
なんにしても、ギャロによる挿入歌5曲のセンスには脱帽だし、友人ではあるがジョンフルシアンテという当時スター街道まっしぐらの男の書いた曲を使わなかったこともすごい。
またタイミング見計らってブラウンバニー観ようと思う。
とにかくジャクソンCフランクを知れただけでもこのサントラを買ってよかった!!!
ちなみに僕が買ったのはこの北米エディションのジャケットのようで、
本家?のはもっと露骨なジャケ。
結構オススメでやんす
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