ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

1-2 元祖フォークロック"The Byrds"‼︎

どんな音楽が好きかと聞かれれば

「ロックが好きです」

と答えたい。僕にとってはこの答えが1番正確に答えを表した表現であるから。

しかし現実には

「古いロックが好きです」

と答えるだろう。

「ロック」だけでは恐らく認識のズレが生じるであろうことはさすがに僕でもわかる。しかしやはり「古いロック」と言わなければならないのには抵抗がある。

新大阪駅ができても大阪駅大阪駅でしょうが!!旧大阪駅とは言わないでしょうが!!

ってことなの。

いやま、この辺は無視して聞き流してください。

 

これを聞いてほしい。

アメリカンロックよりブリティッシュロックのほうが好きなんです。」

これもよく言ってるセリフなんです。これを聞くと「あぁアメリカのロックはそんなに好きじゃないんだね」って当然思われるかもしれない。そりゃそうだ。

しかし例え話をしよう。

あるところにアメリカンロック大好き野郎がいて、アメリカンロックしか聞かない彼が♡を5個持ってるとしたらアメリカンロックに5個全部振り分けるだろう。

対する僕は、なんと♡を50個持っているのだ。僕はブリティッシュロックに40をアメリカンロックに10を振り分けよう!

結果的に僕は『アメリカンロックより全然ブリティッシュロックが好きだけど、アメリカンロック大好き野郎よりもアメリカンロックが好きだ』ということになる。

……やっぱりこれも無視してくれていいや。

つまりはアメリカンロックも割と好きだよってこと!

 

1-2 元祖フォークロック"The Byrds"‼︎

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第1弾はCSN&Yを軸とした繋がりを関連図と共に見て行こうということで図はここまで来ました。

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↓ここまでのお話↓

ここからはCSN&Yの4人が元々在籍していたバンドを見てみようということでまずはCSN&Yの「C」、David Crosbyが元々いたThe  Byrdsから。

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「バーズはビートルズとボブディランの《あいのこ》だ」という表現がよくされる。確かに僕も第1印象は、ふーん、といった印象だったような…

ビートルズに影響を受けてバンド結成/ジョージハリスンの影響を受けてリッケンバッカーの12弦ギター使用/ボブディランの「ミスタータンブリンマン」のロックアレンジでデビュー…

ここらへんのデビューまでの成り立ちが僕のようなクソ野郎がバーズ様を侮ってしまった要因だろう。

そんな僕だったが、3rdアルバム「Fifth Dimension(霧の5次元)」でバーズの虜になる。彼らの代名詞である豊かなフォークロックに時期としては早々とサイケデリックを混ぜ込んだ素晴らしい作品なのだ。今回はこの「霧の5次元」という名盤を紹介しようと思うがその前にバーズというバンドについてもう少し話そう。

The Byrdsとは

バーズは1964年にロサンゼルスでロジャーマッギン、ジーンクラーク、デイヴィッドクロスビーにより結成され、そこにクリスヒルマンとマイケルクラークが加入して始まった。この時代の西海岸の代表的ロックバンド、ドアーズやグレートフルデッド、ジェファーソンエアプレインなどは皆65年に結成されており、64年結成のバーズは元祖ウエストコーストロックバンドとも言える。

65年4月にシングル「Mr.Tambourine Man」でデビュー。ボブディランの曲のカバーで、ディランがこの曲をレコーディングした5日後にレコーディングしている。レコーディングはロジャーマッギンの12弦ギター以外は後に「The Wrecking Crew(レッキングクルー)」と呼ばれるロサンゼルスのスタジオミュージシャン集団が演奏しており、マッギン以外のメンバーは歌のみ参加している。

レッキングクルーとはフィルスペクターが集めたスタジオミュージシャン集団で、フィルスペクターのウォールオブサウンドからビーチボーイズ、サイモンアンドガーファンクル、カーペンターズなどなどほんとにたくさんのヒットソングのバックで演奏している。

Mr. Tambourine Man

Mr. Tambourine Man

  • Columbia/Legacy
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Turn! Turn! Turn! [12 inch Analog]

Turn! Turn! Turn! [12 inch Analog]

  • アーティスト:Byrds
  • Music On Vinyl
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65年6月に1stアルバム「Mr.Tambourine Man」、同年12月には2nd「Turn!Turn!Turn!」をリリースし、フォークロックというジャンルを確立した。

64年のアニマルズによるアメリカのトラディショナルフォークソング「朝日のあたる家」のロックアレンジが世界最初のフォークロックだと言われているし、同時期にフォークの神様ボブディランがアコギをエレキに持ち替えアルバム「Bringing it all back home」でロックを取り入れたが、「フォークロック」というイメージを定着させたのは間違いなくバーズであるだろう。

バーズがミスタータンブリンマンとターンターンターンの2枚のアルバムで作り上げた「フォークロック」には抽象的な言い方ではあるが「豊かさ」という言葉がよく似合うと思っている。ロジャーマッギンとジーンクラークとデイヴィッドクロスビーによる美しい3声コーラスももちろん大きいが、豊かさを感じる1番の要因はロジャーマッギンの12弦ギターだろう。

ビートルズの「A Hard Days Night」によるジョージハリソンのリッケンバッカー12弦に影響を受けてリッケンバッカー12弦を手にしたロジャーマッギン。ジョージはビートルズ後期になると12弦を使わなくなるが、ロジャーマッギンはずっと使い続け、バーズ解散後も12弦ギターと共に生きているようだ。ミスター12弦といえる男、ロジャーマッギン!彼とジョージが12弦を世間に広めなかったらレッドツェッペリンの天国への階段も、イーグルスのホテルカリフォルニアもなかったかも…

ちなみにビートルズ中期のジョージの代表作とも言える「If I needed someone」はバーズの1stアルバムに収録されている「The Bells Of Rhymney」のマッギン12弦を聞いてヒントを得たことをジョージが認めている。

さらにちなみに「If I needed someone」が収録されているアルバム「ラバーソウル」がリリースされるのとほぼ同時期に競合して売って行こう的な感じでホリーズは「If I needed someone」を提供され、シングルでリリースしている(コーラスの出来が悪いとジョージは酷評)。おぉまつわるまつわる。

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さてバーズ。最初の2枚のアルバムでは「ミスタータンブリンマン」を筆頭に「all I really want to do」「chimes of freedom」「くよくよするなよ」「時代は変わる」など多数のボブディランの楽曲やピートシガーの「Turn!Turn!Turn!」などをフォークロックに仕上げたカバーとジーンクラークによるオリジナル曲で構成されている。しかし66年頭にはメインのソングライターであったジーンクラークが脱退してしまう。ここからロジャーマッギン、そしてデイヴィッドクロスビーのバーズが始まる。

66年3月に世界最初のサイケデリックソングと言われるシングル「Eight Miles High(霧の8マイル)」を発表し、それを含む3rdアルバム「Fifth Dimensions(霧の5次元)」を発表。このアルバムではこれまでの代名詞とも言えるボブディランの曲を使わなくなった。

誰よりも早くインド音楽を取り入れ、ラーガロック、サイケデリックロックの扉を開いた。さらにデイヴィッドクロスビーはインドの民族楽器であるシタールに目をつけロック界に持ち込み、ジョージハリソンにシタールを勧めた。

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66年8月発表のビートルズの「リボルバー」の影響を幾多のバンドが受けサイケデリックロックがブーム化していき、67年6月発表の「サージェントペッパーズロンリーハーツクラブバンド」では更にコンセプトアルバムという発想を生み出し、数々のバンドのアルバムがサージェントを見本として作られた(サージェントシンドローム)。

そういった60年代後半のサイケデリックロックの流れの中、バーズの「Fifth Dimensions」が「リボルバー」より早く作られたという事実はそれだけでバーズがどれだけロック史において重要であるかを物語っている。この時期、ほとんどのバンドがビートルズの影響下にある中、バーズはビートルズに影響を与えた数少ないバンドの1つであったと言えるだろう。

67年には4枚目となる「Younger than yesterday(昨日よりも若く)」をリリース。

Younger Than Yesterday [12 inch Analog]

Younger Than Yesterday [12 inch Analog]

  • アーティスト:Byrds
  • Sundazed Music Inc.
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これもビートルズのサージェントよりも早く、コンセプトアルバムと呼べそうな作りではあるがなんとも。実験的な要素もあるはあるが(効果音を多用したり子供の声を入れたり)なんともちぐはぐな印象。個人的には駄作。前作で振り切ったと思いきや再び使用したボブディランの「My Back Pages」が1番いい!といった感じ。

この時期からロジャーマッギンの独裁にデイヴィッドクロスビーは不満を露わにし始める。

68年1月「The Notorious Byrd Brothers(名うてのバード兄弟)」発表。

Notorious Byrd Brothers [12 inch Analog]

Notorious Byrd Brothers [12 inch Analog]

  • アーティスト:Byrds
  • Music on Vinyl
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メンバー間の確執から完成まで6か月もの時間がかかった。その救済としてジェリーゴフィンとキャロルキングの名コンビ作詞作曲の「Goin'back」をシングルでリリース。この曲をアルバムに使用するとかしないとか、曲が足りないからジーンクラークを一時的に召還しようとか、技術不足でドラムのマイケルクラークを解雇とか、デイヴィッドクロスビーはこのアルバムの発売前後で脱退し、CSN&Yを結成するとか。そんなグダグダな中発表された「名うてのバード兄弟」だが、そんなに悪いアルバムではないと思う。4曲目の「Draft Morning」なんかはこれ元祖シューゲイザーなんじゃない?って感じの心地よい浮遊感を持っている。

その後ベースのクリスヒルマンも脱退し、オリジナルメンバーはロジャーマッギン1人に。音楽性はカントリー路線になり数枚のアルバムを残しバーズは73年に解散する。68年6th「ロデオの恋人」はカントリーロックの重要作に位置付けられている。

名作映画「イージーライダー」のために作られた69年の「Ballad of Easy Rider」に収録されているウディガスリーの「Deportee」のカバーは秀逸。

Ballad of Easy Rider [12 inch Analog]

Ballad of Easy Rider [12 inch Analog]

  • アーティスト:Byrds
  • Friday Music
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The Byrdsというバンドの概要はこんなところである。最後こそ失速気味ではあるが、ウエストコーストロックの原点であり、フォークロックの原点であり、サイケデリックロックの原点であり、カントリーロックの原点であるとも言えるバンドなのだ。悔やむなら3rd「霧の5次元」の後にもう1枚、もう1枚極上のサイケデリックアルバムが作れていれば

ビートルズとボブディランの《あいのこ》」

なんて舐められることはなかったのに。

最後にもう一つまつわってから「霧の5次元」を紹介して終わりたいと思う。図を作るアプリだが結局我慢出来ず有料版を買ってしまい無限に広げられるのでまつわりたくて仕方がないのだ。

ロジャーマッギンはバーズ結成前バックミュージシャンとして活動を始めており、そのキャリアの中でジュディコリンズというフォーク歌手の1963年の3rdアルバムでギターを弾いている(この頃はジム・マッギン名義)。

時は流れて68年のジュディコリンズ8枚目のアルバムでギターを弾いているのがバッファロースプリングフィールド解散直後でCS&N結成前のスティーブンスティルスなのだ。コリンズとスティルスは恋人同士だったが破局し、CS&Nのデビューアルバムの1曲目の「組曲:青い目のジュディ」でその悲しみを歌っている。(コリンズとスティルスはなんと50年越しに2018年にデュエット作品「Everybody Knows」をリリース!!)

マッギン目線で言うと自分のバンドを結成する前に仕事でギターを弾いた歌手の元カレと、自分との確執でバンドを去っていったクロスビーが一緒になんかCS&Nってバンド始めた。って感じか。

ちなみにジュディコリンズのヒット曲「Both Side Now(青春の光と影)」はジョニミッチェル作曲である。まつわる。

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(色変えないと何が何だかわからんとこまで来たな…)

さて、やっとFifth Dimensions、霧の5次元を軽く紹介して終わりますか!

Fifth Dimension [12 inch Analog]

Fifth Dimension [12 inch Analog]

  • アーティスト:Byrds
  • Music On Vinyl
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Side one

1.5D (Fifth Dimension) (McGuinn) 
2.Wild Mountain Thyme (traditional) 
3.Mr. Spaceman(McGuinn) 
4.I See You (McGuinn, Crosby) 
5.What's Happening?(Crosby) 
6.I Come and Stand at Every Door (Nâzım Hikmet) 

Side two

7.Eight Miles High (Clark, McGuinn, Crosby) 
8.Hey Joe (Where You Gonna Go) (Billy Roberts) 
9.Captain Soul (McGuinn, Hillman, Clarke,Crosby) 
10.John Riley(traditional)
11.2-4-2 Fox Trot (The Lear Jet Song)(McGuinn) 

 

このジャケット、ジーンクラークが抜けて4人となったバーズが魔法のじゅうたんにのってインドから襲来!って感じがして本当にカッコいい。

インド音楽を取り入れたラーガロックの第一人者はジョージハリスンと思われがちだが出発点はここだったんだな。

実はスペースロックの原点とも言われていて(原点持ちすぎ)、真っ黒な宇宙に浮かぶ魔法のじゅうたんにも見えるジャケット。

*スペースロックはサイケデリックロックをさらに細分化したジャンルの内の一つと僕は捉えていて、名前の通り宇宙を連想させるサウンドを持っている。代表的なものはピンクフロイドの初期など。

アルバムタイトル曲である1曲目「5D」は前作までのフォークロックの暖かさとスペーシーなニュアンスを見事に融合させたマッギンによる名曲。コーラスも見事にハマってかなり完成度の高い曲。

ビーチボーイズの「スマイル」に作詞家として参加を要請されたことでも有名なVan Dyke Parksがオルガンを弾いているのも驚き。

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Van Dyke Parksはまさに奇才と呼ぶにふさわしい人でヒットチャートとは無縁だが彼のソロ作品は才能とアイデアに溢れている。彼はなんと1973年には我が日本の誇るバンド、「はっぴいえんど」のアルバム『HAPPY END』に収録されている「さよならアメリカ、さよなら日本」にプロデューサー、演奏で参加した。

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はっぴいえんどバッファロースプリングフィールドに大きく影響を受けた、ジャパニーズロックの原点と言われているバンドである。

Fifth Dimensionsに戻ります。2曲目の「Wild Mountain Thyme」ではトラディショナルフォークをインドの香りがプンプンするストリングスに乗せることで奇妙な雰囲気を生んでいる。10曲目の「John Riley」もトラディショナルで、6曲目「I Come and Stand at Every Door(死んだ少女)」はナジム・ヒクミットというトルコの詩人が我が日本のヒロシマについて書いた詩にピートシガーがトラディショナルの曲をつけたもののカバーであり、2,6,10と3曲のトラディショナルフォークをやっているが、重いのに浮遊感がある、暗いのに暖かさがある、本当に素晴らしいアレンジだ。このニュアンスはヴェルベッドアンダーグラウンドに繋がっていくんじゃないかと勝手に思っている。

3曲目マッギンによる「Space Man」はボブディランの「I Want You」のような軽快なフォークロック。アルバム内で1番キャッチーな曲だろう。しかしこのアルバム全体を通してコーラスワークが神がかっている。ジーンクラーク不在でもこれができるなら何故次作でもできないのか…

4曲目はマッギンとクロスビーの共作「I See You」。この曲はYesが1stでカバーしている。ちなみYesの1stではバッファロースプリングフィールドの曲もカバーしており、彼らがウエストコーストロックに影響を受けていることがうかがえる。

5曲目はクロスビー作の「What's Happening?」。僕はこの曲が1番好き。後のCSN&Yやソロでも聞けるようなクロスビーの真骨頂とも言える曲だ。これもフォークとサイケのバランスが絶妙で、脱帽。

7曲目が先行シングルとしても発売され、このアルバムを代表する曲「Eight Miles High」。ジョンコルトレーンに影響を受けたと言われるマッギンの奇妙な12弦ギターフレーズとうねるようなクリスヒルマンのベース、世界最初のサイケデリックロックである。アルバムの邦題が「霧の5次元」、この曲の邦題は「霧の8マイル」で、なんか気持ちいい。邦題つけた人天才!1st,2ndでは暖かさを倍にし豊かさを生み出したマッギンの12弦だが、3rdでは12弦ギターによって奇妙さを倍にしている。弦が倍だと全部倍になるのか(そんな単純ではない)。

8曲目の「Hey Joe」は様々なミュージシャンにカバーされている古典的なロックソングなんだが恐らく1番有名なのはジミ・ヘンドリックスのカバーだろう。ジミヘン版を知ってる人がこのバーズヴァージョンを聞けば「速っ!」と思うはず。クロスビーの熱い歌が聞ける。

9曲目「Captain Soul」はヘロヘロでサイケデリックインストゥルメンタル。11曲目「2-4-2 Fox Trot」も掃除機の音から始まるまさに吸い込まれそうなガチガチのサイケソング。この2曲なんかは正直単体で評価できるような代物ではない。がしかしアルバム内で聞くと違和感なく聞ける。むしろなくてはならないとすら感じてくる。サイケの魔力。

とまぁ捨て曲のない(あえて捨てるならやっぱり9と11になるんだけど。笑)完全なる名盤「Fifth Dimensions(霧の5次元)」。まだ聞いたことない人は是非とも聞いてほしいもんです!

図はここまで!

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いやー楽しくなってきた。次回はCSN&Yの「N」グラハムナッシュが在籍していたホリーズ!!

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