あけましておめでとうございますー
去年3月にブログを始めて、
1章CSN&Y関連
2章The Foolがジャケット手掛けた関連
3章プログレ
4章UKサイケ
5章UKフォーク
6章ソフトロック
7章シスコサイケ
8章LAサイケ
まで書いたところで去年を終えまして、2020年はNYサイケやデトロイトサイケなんかのUSサイケの続きからスタートさせようかと思っていたのですが頭が回りません。
終始グダグダではありますが僕は「ここを先に書いてからその繋がりでここを書いたら次はここに繋がる…」的なことを一応考えてて、順序立ててロック史をここまで進めてきたつもりなんですが新年1発目、正月ボケで何にも頭が働きません。
なのでここまでの各章で書き漏らしているバンドの内の一つをウォーミングアップがてら軽く書いておこうかと。The Travel Agencyというシスコバンドがいまして、7章シスコサイケの時に書き漏らした、というかロック史に絡めて書くには情報が足りないし何よりずっとLAサイケだと思ってたのね。とにかく情報無くて、〝Travel Agency〟というバンド名も最悪で検索かけても当然旅行代理店ばっかりが出てくるの。となるとやっぱりCDに記載された情報を頼るしかないわけで、そう言えばブックレットにほんの少し何か書いてなかったっけな、と改めて目を通してみたらおもいっきりサンフランシスコのバンドだったのでびっくり!
Travel Agencyは時を超えて90年代に再評価、再発掘された類のバンドであり個人的に再発掘USサイケ群の中でも割とお気に入りのバンドであるが、そう言えばサイケ特集的なものでこのバンドが取り上げられてるのもあまり見たことがない。この辺の再発掘組ってアメリカ本国でどの程度の評価を受けてるのかとか、売れなかったにしても当時どれ程の認知度があったのかとか、割と把握し辛いことが多いのよね。
その辺のことを知るために〝Discogs〟のサイトでレコードの値段を見てレア度をチェックしたり〝All Music〟のサイトで欧米人の評価を見たりするのが最近の小さな楽しみだったりするんだけど、まずネットでもLPを売ってるのを見たことない。ので恐らく当時全くと言っていいほど世に広まらなかったバンドであり、もはや〝再〟発掘というよりは発掘と言ってもいい代物なのだろう。CDとして再発されたのは99年にイギリスのレーベルからだがその前に97年にヨーロッパで非公式に再発されてるみたいで本国アメリカよりもヨーロッパで再評価されたバンドであるよう(とても納得)。〝All Music〟でのレビューを除いてみると僕の和訳が正しければ「特に目立って優れたものはない」とか「平凡」だとか中々厳しい意見が多くてショックを受けている。しかし僕は全くそんな風には思わなくてむしろ独特な部類だと思っている。ビートルズらサイケポップの影響を受けながらガレージロックな雰囲気もあって、シスコサイケ特性のファズの効いたギターが目立ったと思えばブリティッシュ フォークっぽい暗いフォークハーモニー、へろへろなアシッドフォークといえる曲もあり、それらが混ざり合ったような曲では《早すぎたオルタナ》とも呼べそうな当時の他バンドに似てるものを探すのが難しいオリジナリティを作り出している。
なんせCDに記載されてるバンド説明がサンフランシスコで66年に結成されたということくらいしかわからないくらい情報はほとんど無いに等しいがそんなThe Travel Agencyというバンドを新年1発目に紹介したい。
7-6 The Travel Agency〜旅行代理店〜(第51話)
66年にサンフランシスコにて結成され、68年に唯一作となる「The Travel Agency」をリリース。見よ!このサイケ感満載の素晴らしきジャケット!
Discも素敵!裏ジャケも!
トラベルエージェンシーはフランシスコ・ルピカ、マイク・エイデロット、Steave Haehl(読み方わかんない)の3ピースバンドでありオルガンやストリングスも添える程度に軽く登場するが、基本的にはギターベースドラムのみのバンドサウンドで構成されている。アメリカでポップ色の強いサイケといえばソフトロック/サンシャインポップやソフトサイケ、バブルガムポップあたりがいるが、バンドサウンドが強いサイケポップは珍しいんじゃないかな。どちらかと言えば同じ西海岸の他サイケバンドよりもビートルズやホリーズなんかのUKサイケポップに近いかも。個人的にはビートルズ「リボルバー」、ホリーズ「Evolution」に匹敵するサイケポップの名盤だと思ってるこの「The Travel Agency」をもっとロックファンに聞いてもらいたくて…Apple Musicにもあるのよなんと!
3ピースでありながら非常にバリエーション豊富な楽曲が並ぶがとにかく歌とメロディが抜群によくてポップで聴きやすいアルバムになっている。
ピンクフロイドばりのスペーシーなオルガンから始まる1.What's A Manはシングルとしてもリリースされた爽快なポップチューン。
2.Sorry You Were Bornや6.Make Love、12.Old Manなんかはガレージロックなアレンジでありながらメロディックなメロディ、これが非常にオルタナっぽくて68年のサウンドで鳴ってるのが不思議な感覚。似たようなことをピンクフェアリーズとかに感じたことがあるが、かなり時代を先取りしたものであると言えるだろう。
ファズの効いたサイケブルース3.Cadillac George、重力サイケな4.Lonely Seabird、ブリティッシュ フォークな雰囲気を持った5.So Much Loveと名曲続きなA面だが僕が特に好きなのがB面アシッドフォークな7.That's Goodとバロックポップな11.You Will Be There。全体的にガシャガシャドタドタしたドラムが特徴でもあるが、この2曲はドラムレス。ソングライティング能力の高さと空気感の作り方の巧さが目立つ2曲だと思う。7.That's Goodではオルガンが、11.You Will Be Thereではストリングスが入っているがどちらも必要最低限のアレンジって感じでスマート。2声のボーカルセクションもよく練られているし、何者なんだほんとに…
僕が持ってるのは2012年に英Kismetというレーベルから再発されたCDであるが、嬉しいことにアルバム未収録のシングル曲がボーナストラックとして収録されている(Apple Musicもこの再発盤のやつ)。
13.Time、14.Made For Youは「リボルバー」のB面に入ってても全く不自然じゃないと同時にバーズの「Fifth Dimension」に入っててもいいとも思えるサイケポップ。
15.Emitなんだけどこれが13.Timeのインストバージョンで、気付くのに暫くかかったんだけど〝time〟を逆さにして〝emit〟になってるのね。洒落てるぜ!
16.What's A Manは1曲目のシングルバージョン(恐らく)で17.She Understandsも同じように9曲目のシングルバージョンかと思ったらこれが全く違う曲なのよね…どちらも良い曲(特にボーナストラックの方)なんだけどこれが本当に謎で、僕は再発したKismetが曲名表記を間違えたんじゃないかと疑ってるんだけど真相は不明…シングルLPを手に入れて確認するしかないのか。
〝Discogs〟で見る限りThe ChancesというバンドとShantiというバンドにトラベルエージェンシーのメンバーが関わりがあるみたいで、フランシスコ・ルピカは76年にソロアルバムをリリースしてるよう。もうそれは全く知らない、探してみよう。
しかし繋がりは全くないわけではなくて、このアルバムをプロデュースしたのがBreadのジェイムス・グリフィンである。Breadは70年代アメリカのポップバンドで、僕はスリードッグナイトやカーペンターズ辺りの人達ってイメージであまり聞けてなかったが69年の1stを聞いてみたら素晴らしきソフトロックでびっくり。ソフトロックがアダルトコンテンポラリーに変化していく様をBreadが表しているかも。
以上!恐らくここまで書いてきた中では最も知名度の低いバンドなんじゃないかと思うトラベルエージェンシー。日本語の記事も見当たらなかったので書いてみましたが本当にオススメなのでロック好きは是非!オルタナ以降を好きな人にも響くはず!