ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

3-6 プログレ5大バンド?ジェネシスの二面性

3-6 プログレ5大バンド?ジェネシスの二面性

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この順番で来たらやっぱりジェネシスにも触れておくべきだなぁとここ1週間ほど頑張って聴いてました。ブログ書こう!って思わないと多分ちゃんと聴くことももうなかっただろうし、いい機会でございました。ピンクフロイド、キングクリムゾン、イエスELPと並んで5大プログレバンドの1つであるジェネシスだけど、彼らを省いてプログレ四天王なんて言われることも実はよくあって、まぁそれも納得という感じで。

ジェネシスには大きく2つの時代があり、ピーター・ガブリエル(通称ピーガブ)がボーカルの70年代前半シアトリカル期とフィル・コリンズがボーカルの80年代ポップ期であるが、ポップ期のほうが爆発的にヒットしたので知ってる人は多いと思う。

僕のジェネシスとのファーストコンタクトは全世界でヒットした86年の「invisible touch」である。ブックオフで250円で買った。多分15,6歳の頃で、まだ自分がどんなタイプのロックが好きなのかわからなかった頃だ。良質なポップといった感じで聴きやすかったので、同じく250円で並んでいた91年「We Can't Dance」も購入。

そんな感じでしばらくは80年代のポップバンドという認識だったんだけどプログレにハマりだした時に元々はジェネシスプログレバンドであると知って、名盤と紹介されていた72年4th「Foxtrot」と73年5th「月影の騎士」を購入。けどすでにピンクフロイドとキングクリムゾンにボコボコに殴られていた僕にはジェネシスのパンチが弱く感じてしまい、この良さがあまりわからずパッとしない印象であった。

ってなわけで僕が持ってるのはピーガブ期の72年4th「Foxtrot」と73年5th「月影の騎士」、フィルコリンズ期の86年「invisible touch」91年「We Can't Dance」の計4枚だけなんだけど、ここ1週間で全14,5枚あるオリジナルアルバムをApple Musicでざっと聴いてみたけど僕の持ってる4枚がなんとまさしくベストな4枚なんじゃないのか?となり、「え、じゃぁやっぱジェネシスって…」という思いと「いやこの4枚ちゃんと聞けば結構いいじゃない」って思いが同時に湧き上がってきたのだ。

僕なんかはついついジェネシスに対して酷い物言いをしてしまうんだけど、もちろん大人気バンドだしロック界に多大な影響を与えたバンドの1つなのは間違いない。僕だってプログレ期はムーディーブルースと一緒くらいいいと思うし、ポップス期はスティングと一緒くらいいいと思ってる。

ピーガブ期(プログレ期、シアトリカル期)

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(ピーガブ)

とにかく75年にピーターガブリエルが脱退するまでジェネシスはピーガブのバンドであったと言えるだろう。彼の元祖ビジュアル系?とも言える奇抜な衣装とシアトリカル(演劇的)な世界観が初期ジェネシスの特徴である。

デビューは69年であり1st「創世記(From Genesis to Revelation)」ではまだ個性は芽生えていない様子。それでもふんわり漂うサイケ臭とピーガブのメロディセンスは普通に良くてサイケポップバンドとしては全然悪くない。初期のピンクフロイドやムーディーブルースの感じもある。ウィキペディアによると「Bee Gees的サウンド」らしいが、それも別に悪い方向ではないと思うし、むしろ僕がジェネシスに対して持つ嫌な要素が無くて良し(Apple Musicにないんだよな1st)。

侵入(紙ジャケット仕様)

侵入(紙ジャケット仕様)

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70年に2nd「侵入(Trespass)」をリリース。1stの評価が芳しくなかったことからアートロックへの方向性を強め、より作品を作り込んでいくようになる。この1stから2ndの音の変化はほんとに69年と70年、サイケからアートロックへの流れを表していて、時代の流れを表す教科書のようである。鍵盤のトニーバンクスはメロトロンを導入し(多分1stでは使ってないように思う)、ギターのアンソニーフィリップスは主に12弦を使いブリティッシュフォーク的なサウンドを作り上げている。ピーガブのシアトリカルな要素も少し見えだし、聴きごたえがある。このアルバムも僕は嫌いじゃない。

アンソニーフィリップス

この「ジェネシスらしくない」1stと2ndだが、その要因はギターのアンソニーフィリップスにあると思われる。フォーク的要素を強く持っていた彼は2ndリリース後[ステージ恐怖症]という理由で脱退する。

脱退後はクラシックギターを学び数々のソロ作品をリリースし、81年には「スノーグース」で有名な叙情派プログレバンドCamel(キャメル)の「The Single Factor」に参加している。

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Camelは73年デビューの元祖叙情派プログレと言われるバンドであるが、僕はそんなに好みではない。70年代後半にはカンタベリーロックの代表格である「Caravan」のメンバーが合流したりもする。

カンタベリーロック」とはイギリスのカンタベリー地方でソフトマシーンとキャラバンを中心に栄えたプログレッシブロックの呼称であり、ジャズ色が強いのが特徴。またソフトマシーンを書くときに触れます!

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ティーハケット、フィルコリンズ加入

さてジェネシスだが脱退したギタリスト、アンソニーフィリップスの代わりにスティーハケットが加入。そして新たなドラマーとしてフィルコリンズが加入する(前任ドラマーは実力不足での解雇)。

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ピーガブ(ボーカル)、トニーバンクス(鍵盤)、マイクラザフォード(ベース)のオリジナルメンバーにスティーハケット(ギター)、フィルコリンズ(ドラム)が加わったこの5人でジェネシスプログレ黄金期を突き進むわけだ。

71年3rd「怪奇骨董音楽箱(Nursery Cryme)」リリース。この頃からピーガブの容姿も奇抜になり始め、シアトリカルロックバンドとしての評価を確立する。特にその演劇性がイタリアで人気となりイタリアのチャートで4位をとる。そからヨーロッパへ広がり、イギリスでは39位でありながらヨーロッパで人気を獲得した。ピーガブの変化以上に2人の新メンバー加入によるサウンド面の変化が大きいが、その変化の内容については次のアルバムで語ろうと思う。

フォックストロットと月影の騎士

72年4th「Foxtrot」、73年5th「月影の騎士(Selling England by the Pound)」ではそれぞれ全英12位、3位とプログレッシブロックバンドとしての地位と評価を確立していくこととなるわけだが、この2つの名盤とともにジェネシスの特徴を見ていこうと思う。

フォックストロット(DVD付)(紙ジャケット仕様)

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  • アーティスト:ジェネシス
  • ユニバーサル ミュージック (e)
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ピーターガブリエルのシアトリカルな面は同時期に活躍していたデヴィッドボウイと重なるところがあって(というかまず声が似てる)、ボウイが死ぬほど素晴らしいのは言うまでもないがそれに比べるとジェネシスは…ってのが正直なところである。これは単にピーガブVSボウイというものではなくてバンドの表現力の差だろうか。

まるで演劇のように物語を展開していく中でその場面場面の表情を表現していくわけだけど、特に僕みたいな英語がわからない人間にとっては音による表現が大事で、悲しいのか怒りなのか1人なのか賑わってるのか外なのか室内なのか、そんな何となくの絵がボウイなんかは聴いてると見えてくる。ジェネシスは見えづらいし、やはり見えづらいと聴きづらい。そもそもジェネシスのメンバーはピーガブの奇抜な格好を嫌がっていたらしく、なんならコンセプトの共有すらできていたのか怪しいところだ(ぼろくそ)。

フィルコリンズのドラムの音がとにかく「硬い」のが表情を無くしている原因の1つだと思うんだけど、のちにフィルコリンズ主体のポップスをやる時にその「硬さ」がしっくりくるんだから音楽って難しい。

演劇的であるからには「静と動」のメリハリはとても大事になるが、ジェネシスは「静」においては素晴らしい世界観を持ってるバンドだと思う。硬いドラムは鳴ってないしスティーハケットのクリーントーンのギターや12弦ギター、トニーバンクスのメロトロンなどは表現豊かだ。「Horizons(フォックストロット5曲目)」なんかはクラシカルなギター主体のインスト曲であるが美しい。

一転「動」になると硬いドラムと歪みギターとシンセ、オルガン、のっぺらぼうになるんだよなーなんでだろう。フォックストロットの最後の曲である23分にも及ぶ大曲「Supper's Ready」なんかは序盤ひたすら静のパートが続きピーガブのメロディセンスが光る素晴らしいアレンジであるが後半激しくなるとやっぱりしんどい。もったいない。

音質もそうだがアレンジにも疑問点があって「Watcher of the Skies(フォックストロット1曲目)」なんかは斬新なリズムで他であまり聞いたことのないような雰囲気の独特な曲だけど、歌のリズムと伴奏のリズムが「ん?これ成立してる?」ってなっちゃう感じがある。イエスを聞いててもそんな時が山ほどあるんだけどイエスの場合は「ん?これ成立してる?でもかっけー!!!」ってなる。

5th「月影の騎士」ではピーガブのメロディセンスは更に進化し、2曲目の「I Know What I Like」はシングルとしてもヒットした。3曲目「Firth of fifth」なんかも他で聞けないすごい曲。でも全体的にアレンジの嫌なとこはやっぱり同じ感じ。

いや、この2枚いい曲はほんとにたくさんあるんです。だからこそなんかもったいないなぁって思ってしまう。

ピーガブ脱退

(眩惑のブロードウェイ、ジャケはヒプノシス

74年6th「眩惑のブロードウェイ(The Lamb Lies Down on Broadway)」をリリース。コンセプト色がより強まりほぼピーガブのソロとも言えるものになった。2枚組の濃い内容でピーガブ期の集大成とよく言われるが、難解すぎ。僕にとっては唯一心を寄せていたピーガブすら理解できなくなった感じ。たまたま隣のスタジオでレコーディングしていたブライアンイーノがゲスト参加し、ボーカルエフェクトを担当している。

そして75年のツアーを終えるとピーガブは脱退してしまう。ピーガブはソロ活動に入り、80年代には「スレッジハンマー」などのヒット曲を飛ばす。

フィルコリンズ期(ポップス期)

(ここからは例の如く急ぎ足で…)

ピーガブを失い4人となったジェネシスインストバンドとして活動する案も出るが、ドラムのフィルコリンズがボーカルをとることで落ちつく。ピーガブよりもフィルコリンズは力強く伸びのある声であり、味はともかくしっかりとしたボーカリストだと言える。

76年7th「トリックオブザテイル」、8th「静寂の嵐」はまさに僕の嫌な《プログレバンドの70年代後半》といった感じで、ハードロックとポップスとプログレの名残りを足したようなスタジアム臭のするサウンドであった。

この後スティーハケットが脱退。ハケットはソロ活動を続けた後86年にイエスのスティーブハウと「GTR」を結成。

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3人になったジェネシスは78年にその名の通りの9th「そして3人が残った」をリリース。ギターはベースのマイクラザフォードが兼任する形で進んでいくこととなった。

それぞれのソロ活動を挟み2年後の80年に10th「デューク」をリリース。ここからドラムマシンを使用するようになりポップ路線に磨きがかかる。この振り切り方がジェネシスの大成功の鍵だと思っていて、「プログレブームの残骸」から「新たなポップバンド」へと変貌を遂げることになる。このアルバムは初めて全英1位を記録し、ここから81年11th「アバカブ」、84年12th「ジェネシス、86年13th「インヴィジブルタッチ」、91年14th「we can't dance」と出すアルバムが次々1位を獲得することになる。

世界的にも大ヒットしたインヴィジブルタッチの頃になるともはやロックの「ロ」の字もないというようなサウンドであり、全く好みではないが個人的にはここまでやると逆に好印象。曲自体の構成も流石といった感じだし、並行して行っていたソロ活動でも大成功を収めたフィルコリンズの歌声は自信に満ちたものであり、一流のボーカリストのオーラを醸し出している。

フィルコリンズはジェネシスとソロでのポップスターとしての活躍とドラマーとしてはツェッペリンやスティング、クラプトンと共演したり一時期はジャズ、フュージョンバンド「ブランドX」に参加したりで『世界一忙しい男』と呼ばれたこともある。

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ま、そんなこんなで他の5大バンドと比べるとやっぱり別に聞かなくてもいいかなって感じだけど、デヴィッドボウイが好きな人はピーガブ期聞いても面白いと思うし、『とくダネ』及び小倉さんが好きな人はインヴィジブルタッチ聞けばいいでしょう。

次回はソフトマシーンからカンタベリーを軽く!

3章

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全体

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