ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

6-1 ソフトロックというジャンル

音楽を《ジャンル》という箱に入れてしまってカテゴライズすることは正しくないことなんじゃないだろうか。全く同じ音楽なんて2つとないし、例えば僕は《メタル》の箱に固く蓋をしてしまっているんだけど、もしかしたらその中に僕の好みの音楽が密かに眠っているかもしれない。なんてことを日々思ってるんだけど、やっぱり他人との共通認識を得る為に、ましてやこんなブログを書いたりなんかしたらどうしてもジャンル分けが必要となってくるわけで…

音楽ジャンルというのは本当に数えきれないほどあって、そして1つのバンドが1つのジャンルにすっぽり収まるというわけでもなく、例えばビートルズで言うと《ロックンロール》、《ブルースロック》、《フォークロック》、《サイケデリックロック》、《プログレッシブロック》、《バロックロック》辺りを跨いでいると言えるだろう。まぁ結局僕はビートルズは《ロック》バンドだ!って言うんだけど。

数ある音楽ジャンルのだいたいは音楽ファンの中である程度の共通認識を持てていると思うんだけれども、一際意見が分かれる、というかまだしっかり定まってないジャンルがいくつかあって、今回見ていきたい《ソフトロック》もその内の1つである。

6-1 ソフトロックというジャンル

数あるジャンルの中でも屈指のメロディアスさとハーモニーの美しさ、プロフェッショナルな演奏とアレンジを誇るソフトロックであるが、その定義は国内外で大きく違うようだ。

海外で言うところのソフトロックとは日本でいうAOR《アダルトコンテンポラリー》などのジャンルを指すらしいが、これは僕のソフトロックの解釈とは全く違っていて、僕が認識するソフトロックは日本で作られた《ソフトロック》というジャンルのようである。

渋谷系

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渋谷系と呼ばれる東京・渋谷を発信地として1990年代に流行した日本のポピュラー音楽(J-POP)のムーヴメントがある。フリッパーズ・ギターピチカート・ファイブといったバンドがその代表であるが、彼らが《渋谷系サウンドを作りあげる上で参考にしたのが60年代末〜70年代頭のアメリカでロジャー・ニコルズカート・ベッチャーなどといったミュージシャンが関わった曲々であった。フリッパーズギター小山田圭吾ピチカートファイブ小西康陽等がその元ネタをインタビュー等で公言したことで再評価され、それらが《ソフトロック》と呼ばれるようになったということだ。

※先に言っておくが僕は《渋谷系》を通ってなくて、フリッパーズギターピチカートファイブも詳しくはないのであしからず…

60年代末に活動していたロジャー・ニコルズroger nichols & the small circle of friends、カート・ベッチャーのThe millenniumはソフトロックの代表的な2バンドであるが、《渋谷系》が流行した90年代にはまだCD化もされておらず、海外でも再評価されていなかった。まだ発掘されていなかったのだ。それを90年代に音楽マニアであった小山田圭吾小西康陽ら(忘れてはいけないのが山下達郎)が日本で流行らしてCD化させたのだ。本国アメリカよりも早く日本でCD化されたもんだから、「日本人はなんてマニアックなロックを知ってるんだ!」ってアメリカ人もびっくりだったようで。

その後アメリカでは逆輸入的な形で再評価、CD化され《サイシャイン・ポップ》というジャンルとして親しまれている。

《サンシャイン・ポップ》はカリフォルニアで60年代末に生まれた音楽であり、そのほとんどが正当な評価を受けないまま埋もれてしまっていたが、日本での盛り上がりをきっかけに本国アメリカでも再評価され、世界中に広まることとなった。

僕はこの《サイシャイン・ポップ》と《ソフトロック》をほぼ同意義で捉えている。ソフトロックは「柔らかいロック」ってことでゾンビーズホリーズなんかを含む人もいるみたいだがあくまでも僕は60年代後半から70年前半のアメリカの《サイシャイン・ポップ》を《ソフトロック》と捉えているのでイギリスのバンドはその箱には入れていないというわけだ。サンシャインポップが持つ〝サンシャイン〟なきらめきは年中曇り空だと言われているイギリスには無い感性なのである。気がする。

ソフトロックの定義

「ソフトロック、柔らかいロックってことはハードロックの逆なの?」と思う人もいると思うんだけど、その考えは案外間違ってないことに最近気づいた。ので比較しながら僕なりのソフトロックの定義を。

・何万人もの客を動員してスタジアムロック化していくハードロックに対してソフトロックはライブを想定していない緻密なスタジオワーク。

・多数のギターヒーロー、アイドルを輩出したハードロックに対してソフトロックはスタジオミュージシャンやプロデューサー等の裏方の人間が活躍。

・ブルースロックを起源とし、ギターの比重の大きいハードロックに対してソフトロックはブルースの匂いがせず、ギターの比重も小さい。

・ハイトーンで力強いボーカルが目立つハードロックに対してソフトロックは基本的に優しいウィスパーボイスで尚且つ多重ハーモニーが目立つ。

上記の音楽性を備えているアメリカの60年代後半〜70年代前半の音楽が《ソフトロック》である。というのが僕なりの定義なんだけど、やはりこれだけ条件を付けるとなるとソフトロックの総数はそんなに多くはないと思っている。

ゾンビーズ「オデッセイ・アンド・オラクル」、ビーチボーイズ「ペットサウンズ」、あとはビージーズやエルトンジョンなんかもソフトロックと呼ばれているみたいだが、ゾンビーズはイギリスのバンドであるし、ビーチボーイズビージーズもエルトンジョンもソフトロックと呼んでしまうのは中々乱暴な気が。

とはいえビーチボーイズブライアン・ウィルソン)は《ソフトロック》の出現に大きく関わっていると言えるだろう。

ビーチボーイズ

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正直このブログを進めていく上であまりにもビッグすぎるバンドは避けてきた。ビートルズストーンズ、フーやキンクス、そしてこのビーチボーイズも。ピンクフロイドは頑張って書いたけど…

とにかく情報がありすぎて図が広がりすぎて理解不能になりそうなので避けてきたんだけど、ソフトロックを書く上でやはりビーチボーイズブライアン・ウィルソンという男については触れておくべきかと。

てなわけでソフトロックではないと言いつつ6章はビーチボーイズから見ていこうと思うんだけど、今んとこ図ではこんな感じ。

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まだなーんにもないのよ。今まで出てきた繋がりはというとドノヴァンの回でビートルズとのインド訪問の際にビーチボーイズマイク・ラブが同行した件、あとはバーズの「5D」でオルガンで参加したヴァン・ダイク・パークスビーチボーイズの幻(だった)のアルバム「スマイル」に携わったこと、くらいで。まぁ1章はCSN&Yから始まりウエストコーストに触れたけど、2章から5章までずっとイギリスの方に行っていたので…

まぁそんなわけで次回はビーチボーイズ、そして次次回からソフトロックへ突入できればと!

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