ケンジロニウスの再生

ロック史を追いながら関連図を作成(関連図挫折中)

映画『ザ・ビートルズ:Get Back』を観て(Part 2 ①)

『Get Back』Part2、そしてIMAXのルーフトップコンサート観ました!

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元々映画館で上映される予定だった『Get Back』がDisney+での配信に決まった時には軽く落胆した。まぁDisney+なら何度も観なおせるし、そのおかげでこうしてチマチマと感想を書けたりするわけなので、今となっては手のひらを返してよかったと思うわけだ。

それでも『Get Back』のPart3に収録されているルーフトップコンサートのシーンが5日間限定で映画館で上映されるって言われると飛びついてしまうわけで、2/10の木曜日に観てまいりました。とにかくIMAXという映画システムが初体験だったわけで興奮したんだけど、その感想はPart3の感想と併せて書こうかと。

まずは、前回からの続きでPart2の感想を。かなり長い目でだらだら観ていくつもりだったんだけど、2/10にルーフトップ映画館を予約したもんで、急いで観たPart2。

個人的にはPart1は映画『Let It Be』に負けず劣らず暗かった。Part 2はスタジオ移動&ビリープレストンの参加により、先行映像での明るさが観れるのだろう!そんな思いで見始めたPart2!

前回まで↓

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1969/1/13

ジョージ説得失敗

とはいえ前回に引き続き暗雲立ち込める雰囲気の中Part2は始まる。

Part1で描かれたのは1月2日のゲットバックセッションスタートから10日のジョージ・ハリソン脱退まで。最期にジョン、ポール、リンゴの3人がジョージ説得を決意したシーンで終わった。そして12日にその説得が行われるも失敗に終わる(カメラ、音声無し)。その翌日13日からPart2が始まる。

ドキュメンタリーの方向転換はすでに?

朝、時間通りに来たのはリンゴのみ。

前日ジョージ説得を失敗し、ビートルズ及びプロジェクトに暗雲が立ち込める中リンゴは監督のマイケル・リンゼイ・ホッグに

映像は全部使え

と声をかける。マイケルも

脱退の経緯を使えばいいドキュメンタリーになる

と返した。

元々この膨大な密着映像はニューアルバム製作のドキュメンタリーとして撮られたものであったが、結果的には「ビートルズ崩壊物語」である映画『Let It Be(1970)』の素材として使われることとなった。当初の目的とは違ったが、これはこれで撮れ高満載であることにマイケルは気づいていて、もうこの時点でそっちの方向で成立させようというモードになっていることが窺える会話だ。リンゴは「ありのままの姿」というテーマで始まった撮影プロジェクトであるので、このジョージ脱退騒動も「ありのまま」公開することを望んだわけだ。根底の部分ではプロジェクトは破綻していない、と。

ヨーコ問題

少し遅れてポールがスタジオ入りし、リンダの妊娠が告げられた。この子供はメアリー・マッカートニーとして69年8月に生まれます。

リンゴとポールとリンダとスタッフで昨日のジョージ説得会の話に。そこで話されるのがヨーコ問題について。

10日にジョージが脱退を宣言しスタジオを飛び出す直前に何があったかは、この『Get Back』でもあやふやになっている。ポールとの確執、長年格下扱いを受けていたことへの爆発などが原因として挙げられるが、そのジョージの説得会の翌日に開口一番ヨーコの話になるということは、少なからずジョージ脱退にはヨーコも絡んでいるということになる。〝I Me Mine〟への協力を放棄してジョンとヨーコがワルツを踊ったこととか、その辺なのか、もしくはもっと直接的に10日に何かあったのか…

会合ではジョンはほとんど離さずヨーコが代弁していたらしく、その内容に対して「話半分に聞いたほうがいい」とリンダ。Part1終盤ではヨーコとリンダは仲良さそうに話していたけど、やっぱり色々あるんだろうな。

ポールはその件に対して、ジョンとヨーコはシンプルにただ一緒にいたいだけ、それを辞めさせることは誰にもできないしそんな取り立てて言うほど大きな問題でもない、そして

もしヨーコが理由でビートルズが解散したなんてことになれば、50年後に笑われるぞ

と言い放った。ジョンとヨーコの願いはただ男女が一緒にいたいだけの些細なもので、それにビートルズが右往左往する必要はない、とポールは言う。非常に正しい意見だ。ポールってかっこいいのかカッコ悪いのかわからんのよね。そこが魅力か。

残念ながらポールの言う50年後の今、ヨーコ問題はビートルズ解散の数ある原因の一つとしてよく語られている。ジョージ説得会の翌日に開口一番その問題を取り上げている以上、全く関係がないとはやはり言い難いが、ポールは別に大きな問題じゃない、シンプルな男女の願いだ、というわけ。これはポールが自分自身に言い聞かせているようにも取ることができるセリフだった。話し合いの中でリンダが意見すると「口を挟むな、ヨーコ」と冗談を言ったりしてるので、そうは言ってもポールも思うところはありまくりなのよね。

ヨーコを嫌うビートルズファンは日本人でも多くいるが、僕はオノ・ヨーコという人物を彼女の『グレープフルーツ・ジュース』という詩集を読んだ時から大肯定している。

『グレープフルーツ』はジョンの〝イマジン〟の元ネタになったことでも有名で、命令口調で書かれるヨーコの前衛的な詩はほんとうに素晴らしく、最後のページの「この本を読み終えたら 燃やしなさい」を近所の河原に行って実行するほど感化された(僕の手にしたのが硬めの紙?だったので焦げ跡付いただけで全く燃えなかったが…笑)。

そんな僕でも『Let It Be』やこの『Get Back』を観てると、セッション中は離れろよ、とか、アンプに座りやがって、とかやっぱり思っちゃうわけで、まぁ難しいよ。あんな世の摂理を達観した詩を書ける人がこんな簡単な距離感がわからないもんかね…そういうもんかね…

ポールが語る新たなドキュメンタリー案

イデアマンであるポールはプロジェクトが停滞している現状を解決する新たな番組案について語り出す。その内容は〈実際のニュースを使ってニュース番組風に展開していき、最後に「ビートルズ解散」というニュースで締めくくる〉といったものだった。ユーモアに富んだ解散劇だとも思うが、ポールが解散を前提に話出したことにリンゴも「あーあ、」といった感じ。

ポールは「どう?おもろいアイデアじゃない?」って感じにひょうひょうと話すが、その後急に沈黙し、目に涙を溜めて体を震わせる。リンゴも涙を拭う。自分の口にした「解散」というワードに涙するポール、いやー泣けます。Part1のジョージ脱退後もそうだけどポールのこういうところ愛おしいよね。正直鼻につくとこ多いんだけど、憎めないのよ。

戦えマイケル!

この後ポールはジョンと電話するために席を外す。すると完全にビートルズ崩壊へと話が進んでいく中、リンダがマイケルに

戦う姿を見せてマイケル

と懇願。ポールの口からも「解散」が飛び出し、ドキュメンタリーが解散物語へとシフトチェンジしそうな雰囲気の中、その監督に対して諦めず戦ってとリンダは言う。アルバム制作とライブ復活の一部始終を記録したドキュメンタリー、そこへもう一度立ち返ることがビートルズを蘇らせることに繋がるはず。なのにマイケルはもう諦めて解散劇を記録する考えにシフトチェンジしようとしている。

マイケルはセッション当初からメンバーにライブの案を投げかけまくっていて、ドキュメンタリーを成立させるために必死に戦っていた。けどメンバーに否定されまくり、挙句の果てには1人脱退し、そりゃ正直諦めムードになるでしょう。そもそもドキュメンタリー製作を発注された側なのに「あなたの手にビートルズの未来がかかっている」と言われても困ると思うんだけど、この現状だとリンダの言い分は的外れでもなくて、このリンダの懇願シーンは個人的には『Get Back』の名シーンの一つだと思う。

ジョンとポールの本音ランチ会談

ランチにジョンが到着しポールと二人きりで話すことに。ここは非常に深刻な話し合いなのでジョージ説得会と同様カメラは入らなかった。がマイクで盗聴しており、この音声は『Get Back』1番の見どころといえるかもしれない。いくら「ありのまま」といえどもやはり全てカメラの前で起こっていたものであるので、この盗聴こそがガチの「ありのまま」と言えるだろう。人道的かどうかはしらないが、よくやったマイケル!

互いに気持ちをぶつける内容で、特にジョンの口数がかなり多い。セッション中にはポールとジョージが揉めててもほとんど意見を言ってなかったが、ここでかなり胸の内を明かしている。

とにかくポールの仕切りすぎに苦言を。しかしそれはジョンが仕切らなさすぎるからだとポール。ジョージへの文句は2人から出てこず、ジョージに対しては2人とも反省の意を示す。ポールはやり直せることを信じているが、ジョンはジョージの気持ちがわかるようで無理だと断言。

結局ジョージ説得を再び試みることで話は落ち着いたが、ジョージはリバプールに帰っており話し合いは15日に。

結局この13日はこの後最悪の雰囲気で〝ゲットバック〟のリハを行い終了。

当初19,20に予定していたライブは1週間延期させることとなった。

1969/1/14

楽しげなポールとリンゴ

14日はポールが撮影スタッフにピアノという楽器の素晴らしさを熱弁するシーンから始まる。その後

そして一人

とポールがつぶやき「ふぅーー」と叫んだ後に

元気そうな声だ

とリンゴが登場し、2人でロックンロール調のピアノの連弾を始める。こことかは編集して綺麗な流れにしてるようで、ドキュメンタリーというよりは映画として非常にニンマリするシーンになっている。

リンゴは陽気で、変顔したりカメラで遊んだり、なんとか雰囲気を明るくしようとしているのか特に何も考えてないのか、とにかく愛おしい。

そんな中トゥイッケナムスタジオでこの後撮影予定の映画マジック・クリスチャンのセットが搬入され、そのセットを使ってポールとリンゴは遊びだす。マジック・クリスチャン』はアップルフィルムが製作しリンゴが主演したコメディ映画。この撮影予定が決まっているからゲットバックセッションは時間に追われていたという事情もある。主題歌はバッドフィンガーの楽曲が使われ、この映画の擬似サントラ盤がバッドフィンガーの70年1st『マジック・クリスチャン・ミュージック』となる。

ぶっ飛びジョン到着

遅れてジョンが到着。カメラの前でミニコントやジョークを連発。楽しそうに団欒していると『マジッククリスチャン』の脚本兼主演である俳優ピーター・セラーズが撮影の下見のためかスタジオを訪れビートルズに「何の時間?」と訪ねる。楽器を持たずジョークばっかり言ってんだから、そりゃそうだ。

ジョンは完全にラリっていて壊れたように赤裸々。下ネタジョークを連発して皆を笑わせる。ポールはヘロイン漬けのジョンをよく思っておらず、カメラの前でマリファナの話を始めるジョンに「公にする必要はない」と一喝する。

ポールは集まってセッションするわけでもなくジョーク言うだけなんて不毛だと発言するが、ジョンは歌詞を引用して茶化し、それを聞こえてないかのように話を続けるポール、全く噛み合ってない2人。朝はリンゴとポールが楽しそうにしてて、ジョンが来てからはジョンがふざけまくり、和気藹々としていたがやっぱり何かが狂っている。

ジョージ・マーティンは父になれなかったのか

そんな状態の中一瞬ジョージ・マーティンが訪れるシーンがある。

ジョージマーティンがジョンに

前に話したよね?

と問うとジョンは

僕らの隔たりのこと?

と返す。それに対してジョージマーティンは

ギャップだ

と答えた。このやりとりを観ていてジョージマーティンがエプスタイン亡き後の「ビートルズの父親」になれなかったのか、と思った。英語のニュアンスの問題なので明確にはわからないが「今ビートルズに起こっているのはメンバー間の隔たりではなくギャップだ」と言えるジョージマーティンは音楽面だけじゃなく精神面でも良き導き者になりそうな気概を持っていると思うんだけど。EMIから独立もしてたワケだし…まぁ自分の仕事が忙しいか…

その後

ドキュメントも停滞している

というジョージマーティンの言葉に対してジョンは

停滞?順調だろ

と返す。確かに「ありのまま」を世間に見せるドキュメンタリーとしてはこの泥沼状況は順調とも言える。このジョンの皮肉満載の感じ、たまらん。このシーンは予告編で事前公開されている時から気になってたのよねー。

この会話、直前までポールの隣にいたはずのジョージマーティンが消えてるんだけど、会話相手ジョージマーティンであってるよね…?違う?

Madmanセッション

急にジョンがやる気を見せ〝Madman〟をセッション。この曲は結局完成せず未発表となったが、この時のジョンのへろへろアシッド感が見事に乗ってていいんだよなー。

 

マイケルリンゼイホッグが「特番を辞めてアルバムだけにするか?」と妥協案を出し、ポールが「とりあえずカメラを止めろ」と告げて14日は終了。

続く

おいおいおいおいPart2なっても全然明るくならんやんけ!笑

まぁこの翌日15日にジョージと再び話し合い、ジョージ復帰、特番中止、スタジオ移動が決定してアップルスタジオに移ってから好転するわけなんだけど、今回はここまで!Part 2は1/13〜1/25までなんだけど、気になるとこメモりながら映画観てたらこんな書き方になってしまって…この後は好転していくのでさらさらっと書きます!暗い話題の方が盛り上がるのは世の常でして。笑

では!

 

続き↓

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